彼のためにできること

5/15
233人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
 待合室で待っている間、自分でも会社に電話をかけ部長に報告をした。 <お疲れ様です。詳細がわかったらまた連絡してください> 「はい。わかりました」  電話を切る。 「一緒に乗って来られた会社の方、ちょっと良いですか?」 「はい」  看護師に呼ばれ、医者から説明を受ける。 「特に大きな病気ではありません。睡眠不足。あと、食事もあまり摂れてなかったようですね。まぁ、過労でしょう。今点滴を打っています。入院する必要はありませんので、今日帰宅できますよ。ただしばらく安静に。ご家族に連絡が取れたので、今日はご家族が迎えに来るそうです」  良かった、と言っていいのだろうか。  あいつ、相当無理してたんだな。  悠がいる病室に行き、面会をする。  目を閉じていた悠は、俺が近くに行くと気づいたようで目を開けてくれた。 「ありがとう。迷惑かけてごめん」  今にも消えてしまいそうなか細い声だった。 「迷惑とか、そんなこと考えるな。良かったな。入院する必要ないって。帰れるぞ」 「うん」  悠はあまり嬉しくなさそうだった。 「無理しすぎなんだよ……。って言っても、誰も頼りにならないのがいけないよな。力になれなくて、ごめん」 「そんなことない……。俺は……」  その時――。 「天宮さん!!」  若い女性の声がした。  振り返ると 「天宮さん、大丈夫ですか!?」  勢いよく、悠にかけよる若い女の子。  俺たちと同い年か?それより年下?  もう一人、母親らしき人物がこちらを見ていた。慌ててお辞儀をする。 「お世話になりました。あとは家族と悠の婚約者が面倒を見ますので……。ありがとうございました」  この人が悠の婚約者。黒い長髪、身長も高くスラっとした体型、あまり顔は見えなかったが綺麗な人だなと思った。 「いえ。お大事にしてください。失礼します」  当たり前だけど、悠とあまり話ができなかったな。途中で会話が途切れてしまったし。  悠をチラッと見る。婚約者が一生懸命話しているが、表情は変わらず暗いままだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!