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「大丈夫ですか?連絡しても返信してくれないし、とても心配で……」
この子は悠のこと、本当に好きなんだな。
見ていてそう思った。
「離れて?今、会社の人が来ているんだ」
「えっ?」
彼女が廊下に立っている俺を見た。
「こんにちは」
一応、挨拶をした。
俺の挨拶に返事はしてくれず、彼女は悠から離れ
「天宮さん。まだ仕事とか考えないで、ゆっくり休んでください!今日もご飯作りに来ました。お邪魔します」
彼女が家の中に入ろうとしたが
「いや、大丈夫。今日はもう帰って?大事なお客さんなんだ」
「でもっ……」
俺、邪魔かな。帰った方がいいんじゃ。
そう思い始めて来た時
「婚約者なんでしょ?俺の立場くらい理解してよ。医者からももう身体的には大丈夫だって言われているし、父さんだって会社に不在な状況で、ゆっくり休んでなんかいられない。それに客人の挨拶に返事をしないってどういうこと?取引先の所長とかだったらどうするつもり?俺は別にキミと別れてもいいんだけど……」
キツイな、悠。会社にいる時みたいだ。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃ……!」
「反省しているのなら今日は帰って。また連絡するから」
彼女はしばらくたじろいでいたが、悠の頑なな態度に
「わかりました。今日は帰ります。連絡待ってます」
そう言って帰って行った。
ドアを閉め、もう一度カギをかけた後
「はぁ……」
悠はため息をついた。
「ごめん。俺、邪魔だった。気を遣わせちゃったよな。俺が帰れば良かった」
俺なんかより、最近の悠を知っている彼女が近くに居た方が安心できるんじゃないか。
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