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三週間後――。
「えー。今日からここの部署に配属になった葉月くんです。では一言、自己紹介をお願いします」
「おはようございます。今日からお世話になる、葉月壮馬と言います。よろしくお願いいたします」
頭を下げる。
「皆さんありがとうございました。では座ってください」
部長がそう指示をすると、皆指示通りに着席をし、自分の仕事に移り始めた。
雰囲気がガチガチだな。一言も誰も話さないし……。
まさかの「合格」で就職が決まった。
絶対ダメだと思っていたのに。
大手インテリアメーカー。新卒で狙うやつも少なくはない。
俺が配属されたのは、経理部だ。商品の棚卸管理や売上げの傾向などをデータとして表したり、入金・出金が合っているのか確認をする。
「えーと。葉月くんはちょっとこっちへ来て」
部長に呼ばれ、個室になっているブースに移動をした。
「しばらくは経理部の雰囲気と環境に慣れてもらうよう、ただデータの打ち込み作業をしてもらうから。わからないことがあったら、隣の席の出雲くんに教えてもらってください。君よりは年下だけど、ここでは君より先輩になります」
「はい。わかりました」
「これから社内案内をするから。違う部署にも挨拶に行きます。今はまだ朝礼中の部署もあるから、あと三十分くらいしたらまた声をかけるので。それまで、会社の理念とか読んでおいて下さい」
「はい。わかりました」
自席に座る。
新卒で入職した頃を思い出す。
一週間くらい毎日緊張してたな。隣にいる出雲さんに挨拶しとくか。
「出雲さん、よろしくお願いします」
年下だが職場では先輩ともあって「さん」を付けて呼んだ。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
そう一言だけ挨拶してくれ、彼はパソコンに向かった。
アットホーム……っていう雰囲気じゃないな。
当たり前だけど、私語が一言も聞こえてこない。
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