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 校門を出て、駅とは反対側にある幹線道路へと向かう。健吾と雪人が先を歩き、その後ろを大雅と光希がついていく。  携帯電話の着信音が何度も響く。光希のものらしく、涼しい顔で携帯電話をいじっている。画面を見ながら歩くのが不安なのか、大雅の肩に左手を置いてきた。大雅が横目で光希の携帯電話を見た。メッセージアプリの画面で、次々とメッセージを送っているのが見える。 「すげえ、メッセージが来るんだな。いいのか、その子たちを放っておいて」  光希は携帯電話に向けていた顔を上げ、大雅と目を合わす。 「いいんだよ。俺が行かなかったら、他に誰か見つける子たちばかりだからさ」  そう言って、光希は携帯電話の画面に目を落とした。大雅は彼の伏せた目を見つめる。 「それって寂しくねえの。好きなんだよな、彼女たちのこと」  光希が何股かけていようが、大雅にとってはどうでもいいことだ。同性を好きになるのも、同時に複数人を好きになるのも、本人たちが幸せならいいと思っている。  メッセージを送り終わったらしく、光希は携帯電話をズボンのポケットにしまいこんだ。 「んー、好きだよ。かわいいし、俺のこと好きだって言ってくれるし。でも、いつでも相手できるわけじゃないしさ。彼女たちも他に遊ぶヤツがいたほうがいいじゃん」  大雅は肩に乗った光希の腕をつかんで下ろし、まっすぐ前を見つめる光希の横顔を見た。 「俺、友だち以上に、人を好きになったことねえんだけど。光希の言う好きって、英語で言うLOVEの好きなんだよな。LIKEじゃねえよな」  大雅を見る光希の目を丸く、表情が固まっている。 「えっと、そんな堅苦しく考えたことないよ。好きは好き。かわいいし、触りたいって思うしね。それでいいじゃん。ま、大雅くんが恋したことないのは聞いてる、噂でね」  光希はニヤニヤしている。対照的に、大雅は目つきが悪くなり、口元は真一文字になった。  幹線道路に出て広めに作られた歩道を歩く。スピードが出ている自動車やバイクが風を作り出して走り去っていく。  前を行く雪人と健吾が振り返った。健吾がファーストフード店を指さして、2人は店内に入っていった。 カウンターで各々ハンバーガーのセットを注文する。 ハンバーガーやポテトフライ、ジュースが乗ったトレイを受け取り、4人は2階へ上がる。  階段を上がって、通路の一番奥まで行き、窓際の4人掛けの席に座った。大雅と光希、雪人と健吾がそれぞれ並んでいる。  席に落ち着いたところで、おしぼりで手を拭き、大雅は両手を合わせた。隣の光希がその様子をじっと見つめ、同じように両手を合わせてハンバーガーにお辞儀をした。  ポテトフライを1本口に入れた健吾が光希を見ていた。 「なあ、相沢。なんで急に大雅に懐くようになったわけ」
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