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 光希はオレンジジュースが入った容器を手に持ち、ストローをくわえている。ジュースを飲んでから、横目で大雅を見た。 「なんでって。この間、他校生に絡まれてるとこを助けてもらったから」  健吾はポテトフライを1本ずつ次々と口に入れながら、話の続きを待っているようだ。 「そのときに大雅くん、言ったんだよ。『相沢だからとか、相沢以外だからとか関係ない。ただ、複数で寄ってたかって暴力振るおうとしてるのが気に入らない。だから助けた』って」  健吾の目の端が一瞬だけ持ち上がった。雪人もハンバーガーをかぶりながら、目は光希に釘付けだ。  ハンバーガーにかぶりついた光希が話を続けないものだから、4人の間に静寂が生まれる。大雅は微妙に居心地の悪さを感じて、何か話そうと口を開いたが、声を発する前に遮られた。光希がため息をついたのだ。 「俺の話、待ってるんだ。はいはい」  光希は喉を潤すように、オレンジジュースをストローですする。 「俺ね、相沢だから、光希くんだからって言われてきたの。俺だから助ける。俺だから助けてなんかやらない。そういう風に言うヤツばかりで。あ、暴力からの助け以外でもね。だから、なんか新鮮だった。俺だから助けるんじゃないんだって。俺だからって見捨てることもしないんだって」  光希は大雅に向かって頬を緩ませ、健吾と雪人に顔を向けて目いっぱいの笑顔を見せた。 「そんなヤツ、俺の周りにいなかったから。仲良くなってみたいって思った」  雪人がハンバーガーを包んでいた紙を大きく折り曲げる。半分くらい食べ終えていた。 「相沢って、いつも人に囲まれてるけどさ、自分からは人に声かけていかないって耳にするけど、違ったんだな」  光希もハンバーガーを包む紙をくしゃくしゃに折り曲げる。 「んー。そんな噂があるんだ。その通りだよ。大雅くんだけだよ、自分から話しかけるの。そんなことしなくても、笑ってたら周りが寄ってくるんだもん。でも、大雅くんは俺からいかないと、距離縮まらないのは目に見えてるから」  大雅はポテトフライを4本まとめて口に入れ、眉間にシワを寄せた。 「まあ、たしかに光希に言われなかったら仲良くなろうとは思わなかったな。それより、笑ってたら寄ってくるって、その貼りつけた面みたいな笑顔に寄ってくるヤツって大丈夫か」  一番に話を振っておいて、黙々とハンバーガーやポテトフライを食べていた健吾が噴き出すように笑った。 「貼りつけた面って言い過ぎな気はするけど、確かに相沢の笑顔って人目を引くけど、うさん臭さが何となくあるんだよな。だから、大雅と仲良くなってんの見て、気に入らなかったんだけど」  大雅がこめかみをかきながら光希を見ると、彼は口元をゆがませて、頬をかいていた。
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