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告白
「スミさん、ちょっとだけ、いい?」
そうタクミに誘われて、今、空き教室にタクミとスミは向かい合っていた。
お互いが頬を紅に染めて、誰かがこの場面を見ればそれだとすぐ分かる雰囲気が漂っていた。
「タクミくん……、私、その、あの……」
「ごめん! ちゃんと僕から言うから、えっと、その、……あ! そうだ」
タクミはポケットから何かを取り出し、握りしめた。
そして、その手をスミに差し出した。
「なに?」
「手、出して」
スミが白い手を差し出すと、タクミはそれを載せた。
タクミの手が退くと、スミの手にコロンと金色のボタンが――2つ載っていた。
「ボタンが2つ?」
指先でつつくと、日の光を浴びて、反射するそれは、高校と中学の制服のボタンだった。
スミがタクミの制服を見ると、上から2番目のボタンだけが不自然になくなっていた。なくなっているそれが、自分の手のひらに載っている物だ言うことはすぐに分かった。
タクミは1つ咳払いをすると、スミを真っ直ぐ見つめた。
「スミさん、中学の時から、ずっと好きでした」
その瞬間――スミの胸に様々な思い出が蘇った。
誰も見ていないところで努力する姿、仲間をフォローする姿。
そして、スミと図書委員を務め、その当番の際に本について語り合ったこと、文芸部の部誌を渡したこと。
直接、関わった期間は短い。だけど、スミはタクミの穏やかな人となりに惹かれていった。
「ありがとう。タクミくん。私も……すき、です」
「……うれしい! ありがとう。中学の時は渡せなかったんだ」
「中学の時……? 私、タクミ君と話したことあった?」
タクミは照れるからとスミにきっかけを言わなかった。
それは中学生らしい淡い一場面。
環境委員だったスミが花壇に水をやり、嬉しそうに花を愛でる姿。
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