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落月屋梁
数ヶ月ぶりに故郷に帰ってきた。
最寄り駅、見慣れた通り、変わらない風景。
その中で、大人びた格好をしたシオリとスミは待ち合わせの喫茶店へと歩を進めている。
「シオリちゃん、髪伸びたね」
「うん。もう切る必要ないし、伸ばしてみよかなって」
「いいねー! 似合う」
シオリはニヤリと笑って、肘でスミをつついた。
「で、スミちゃんは? 例のタクミ君とどうなの?」
「もうっ! 恥ずかしいから、そんな聞き方しないでよ。……週末とかに会ったりはしてるよ……?」
そのうち、待ち合わせ場所に到着した。
そこは、学生の頃は、何となく漂う大人な雰囲気に気圧されて入店できなかったお店。
ドアを開けるとカランと音が鳴り、シックな雰囲気で統一された店内にはコーヒーの香ばしい香りが漂っていた。
エプロンを着た店員が、声を掛ける前に弾んだ声が掛かった。
「あ! 2人ともこっちだよ!」
奥のテーブル席でミミが手招きをしている。
そして、その隣には、数ヶ月前とは違う柔らかい雰囲気を纏ったミキリがいた。
その世界を見て、スミはまた思いを馳せるのだった。
私たちは、同じ学び舎で同じ時を過ごした。
そして、タイムリミットが切れた今、それぞれの道に歩んでいる。
過去を清算しても、
想いを伝えても、
別れを拒んでも、
共に過ごす時間が減っても、
私たちは、友達だ。
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