第一話 離婚しましょう

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私たちが知り合ったのは7年前。 同じ会社に入社した私と望月佐和子、そして一つ先輩だった尋人と金沢宗次郎。 仕事を一緒にし、休みは何かと一緒に遊ぶようになるのに、それほど時間はかからなかったと思う。飲んだり、旅行にも行ったりした。 そして二年前ぐらいに、宗次郎君と佐和子が付き合い始めた。 その時も尋人は「良かったな」とだけ言って笑っていた。もちろん私も。 いつも尋人は淡々として、軽く見せている。 顔も整っているし、仕事もできて、女子社員から圧倒的に人気がある彼は、彼女がとぎれたことはなかった。 しかし、私は知っていた。尋人の歴代の彼女たちは、初めは宗次郎君に好意を持っていた女の子だったことを。 佐和子が宗次郎君が好きだと知っていたからこそ、尋人は佐和子の幸せを願って宗次郎君に女の子を近づけないようにしていた。 そばにいた私は、それを見ていてわかってしまった。 でも、宗次郎君は私の指導係ということもあり、なぜか社内では私とつきあっているという噂があった。 教育係ということで、私との方が仲良く見えたからかもしれない。 だからこそ、宗次郎君と佐和子の結婚が決まった時、なんとなく居心地の悪い空気を周りから感たのはたぶん勘違いではないだろう。 〝失恋したんだ、三条さん“そんな噂がかなり広がったころ、私は夜珍しく尋人から夜呼び出された。
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