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友人なんだから何度もこの光景を見てきた。
でも、今日は穏やかな気持ちでは見られなかった。
佐和子はずっと宗次郎君が好きだと知っていたから、尋人の片思いと知っていたから。絶対に付き合うことはない。そのことが少なからず、穏やかな気持ちで見られていた。
しかし今は違う。佐和子も宗次郎君との結婚を延期し、尋人に気持ちが傾くことだってゼロではないのだ。
私たちは今、だれも結婚してないし、恋愛は自由なのだ。
サイテー私。
そんな醜いことを考えた自分に嫌気がさして、ふたりの後姿に足が止まってしまう。
「三条」
そんなとき後ろから柔らかな声で私を呼ぶ声にハッとした。
「金沢さん」
会社では苗字で呼ぶ彼に、私もいつも彼を金沢さんと呼んでいた。
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