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昨日までとは違う組み合わせで今歩いていることが、違和感でしかない。
初めは一緒にいて楽しかっただけの関係で、真っ直ぐな佐和子の気持ちで動いてきた私たち。
しかし、佐和子のそれが崩れた時、どうなるのだろう。
とりあえずは仕事に支障がでないようにしなければ。そう思いながら事業部のフロアに足を踏みいれたのに、尋人の姿を見て私は回れ右をしていた
。その姿に横にいた宗次郎君が驚いたように私に声をかける。
「三条、どうした?」
その声に反応するように、デスクに座っていた尋人がこっちを見る。
「宗次郎」
静かに尋人が宗次郎君を呼べば、宗次郎君は笑顔を浮かべる。
「おはよう、尋人」
そんな会話をしている二人をよそに、私はそっとフロアからまた廊下に出た。
目の前で尋人を見てしまうと、あの日のことが記憶によみがえってしまう。結婚までしていたのにこんなふうに動揺するなんてお笑いだ。
自嘲気味な気持ちで休憩室でコーヒーを買おうと自動販売機にお金を入れると、後ろから手が伸びてきてオレンジジュースが押された。
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