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「ありがとう」
極力意識をしないようにと笑顔を向ければ、尋人は何も言わない。この空気に耐えられなくなり、心臓の音がバクバクと煩い。
「今日は、宗次郎君と食事に行くから。あっ、もう一緒に住んでないし関係ないか」
どうしてこんなことを言ってしまったのかまったくわからないが、なんとなく朝の佐和子との楽しそうな様子の後、私も気にかけていますといわれたような感じが面白くなかったのかもしれない。
「そう、よかったな」
それだけを言うと、尋人は戻っていってしまった。
もちろん、私が宗次郎君とどこに行こうが関係ないだろう。笑顔で『よかったな』そう言われた私はさらに自分を落ち込ませただけだった。
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