第一話 離婚しましょう

6/30
前へ
/187ページ
次へ
私なんかじゃ尋人の失恋の傷を癒せなかった。でも幸せだった。 結婚してからキスすることも、もちろん抱き合うこともなかったけど、いつも隣で私に笑いかけてくれる尋人といられて楽しかった。 「明日、引っ越し屋さん朝一にくるから」 その言葉に尋人が驚いたような表情を浮かべた。 「もう決めてあったのか? 家は? 俺も一緒に探すって話してただろ?」 離婚の話がでたのは、この一年で今日が初めてだ。 しかし、私は結婚して同居が始まった時から、離婚した後のことは考えていた。 私の部屋はもう段ボールの山だ。そんなことも知らなかったでしょ? 少しだけ意地悪な言葉を言いたくなるも、それをグッと私は耐えた。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2540人が本棚に入れています
本棚に追加