第一話 離婚しましょう

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会社の同僚も、そうだったのかと私たちのことを温かく見守ってくれている。 それを水を差す必要もないし、あえて波風をたてることもない。社内で離婚の手続きは人事がさらりとやってくれるので、知らない人の方が多い。 だから、あえて知られるまでは言わなくていいだろう。 嘘をついていたことも、離婚することも、申し訳ないと思うが、これは私たち二人だけの秘密だ。 両親にもそのうちほとぼりが冷めたら話せばいいと思っている。 いつか結婚式をすると思っていた両親には申し訳ないが、それは仕方がないことだ。 「じゃあ、これ預けておくね」 立ち上がって、リビングの小さな引き出しを開けて、婚姻届と一緒のタイミングでもらっていた離婚届を見つめた後、私は呼吸を整えて尋人の前に差し出す。
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