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プロローグ
☆ ☆ ☆
「お前ら、何してんだ?」
「ふ、伏見先輩!?」
「何でここに……」
新入生歓迎会でのイベントの最中、人気のない校舎裏で一人の生徒を囲むように三人の生徒が立っていた。
和やかとは言い難い雰囲気の彼らに声をかけたのは、金髪で背が高く目付きの鋭い生徒。
「伏見先輩」と呼ばれた彼は、この状況を見て眉を寄せた。
そんな彼を見て青ざめた顔をした三人は「すみませんでした!」と、頭を下げるやいなやそこから一目散に逃げていった。
「チッ、逃げやがった。……おい、大丈夫か?」
「……きらきら」
「あ?」
「きらきらだねぇ~」
地面に座り込んでいた生徒に声をかけると、じっと伏見を見つめたかと思えば、ニコっと無邪気に笑って言った。
〔一週間前、新入生歓迎会にて〕
☆ ☆ ☆
「恒星くん! おはよ~」
「……」
教室に入った伏見の元に、間延びした声と共に派手な色の頭をした生徒が近寄ってきた。
ニコニコと笑う彼を見た伏見は眉をひそめると、応えることなく彼の横を通り過ぎ自分の席についた。
そんな伏見にパチパチと目を瞬かせるも気にした素振りもなく、後を追い彼は再び伏見に声をかけた。
「恒星くん、おはよう」
「……チッ、おう」
しつこくおはようと言ってくる彼に、伏見はうんざりした表情を浮かべ小さく返した。
「恒星くん、今日こそボクとお友だちになってくれる?」
「断る」
「まだだめなの? いつになったらお友だちになれるのかなぁ」
不機嫌さが滲み出ているのが、傍から見ても分かるのに、それを向けられているはずの彼は全く感じていないのか、それとも分かった上でそうしているのか、笑みを浮かべながら伏見に話しかけ続けていた。
「宙君、またフラれちゃったの?」
「深町くん、おはよう」
「おはよ。頑張るねぇ」
ニヤニヤしながら話しかけてきたのは、チャラそうな見た目の男だった。
彼、深町晃央は伏見の前の席に座ると振り返って言った。
「いい加減友達になってあげたらいいのに」
「なら、お前がなってやればいいだろ」
「ざーんねん、俺たちもうお友達だから。ね、宙君?」
「うん! 友だちになってくれたよ」
「じゃあいいだろ」
「でも、ボクは恒星くんともお友だちになりたいの」
「俺はなりたくねぇ」
一週間前、伏見が助けた相手。それがこの宇都見宙だったのだが、それ以来何故か懐かれてしまい「友達になろう」と付きまとわれていた。
まさかこんな風に付きまとわれる事になるとは思いもしなかった伏見は、あの時の選択を後悔しそうになっていた。
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