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いっしょにさぼる
(宙視点)
「宙、お前いい加減伏見に付きまとうのやめろよ」
お昼休み、食堂で一緒にご飯を食べていた佑弦に言われ、ボクは首を傾げた。
「ボク、恒星くんと友だちになりたいだけだよ」
「でも伏見はそういうの望んでないんだろ? お前が伏見のとこ行く度にハラハラするんだよ」
「うーん……よく分からないけど、友だちになるにはどうしたら良いんだろう?」
ボク仲がいい友だちは佑弦しかいないから、友だちの作り方がよく分からない。佑弦とはどうやって仲良くなったんだっけ?
深町くんはすぐにボクと友だちになってくれたのに。
「そもそも、何で伏見と友達になりたいんだよ」
「うーんとね、星みたいにきらきらしてるでしょ?」
「はぁ? 意味わかんね」
「佑弦はきらきらしてないよ」
「どういう意味だよ。あ、まさか顔の事言ってんのか!」
何で怒ってるんだろ。急にプリプリ怒りだした佑弦の皿に、端に避けておいたピーマンを乗せてあげたら、文句を言いながら食べてくれた。
「恒星くんも、ピーマンあげたら友だちになってくれるかな?」
「なるわけないだろ!」
☆ ☆ ☆
ご飯を食べ終え、教室に戻るために廊下を歩いていると先の方に見覚えのある金色が見えた。
「恒星くんだ、ボク行ってくるね!」
「え、ちょっ……」
佑弦が戸惑ったような声を出していたけれど、見失ったら大変だからそのまま恒星くんのところへ走った。
だけど、恒星くんは歩くのが早い。もうあんなところにいる。
「恒星くーん」
「あ? ……お前かよ」
なんとか追い付き、名前を呼ぶと振り返った恒星くんはボクの姿を見て顔をしかめた。
すぐに正面を向き、速度を緩めることなく歩き続ける恒星くんに、早足になりながら付いていく。
「恒星くんどこ行くの?」
「どこだって良いだろ。付いてくんな」
「そっちは教室じゃないよ」
恒星くんに話しかけるが、ボクの方を全く見てくれず、どこに向かっているかも教えてくれない。
それでも付いていくボクに、恒星くんは一瞬だけ視線を向けたが何も言わなかった。
そうして辿り着いた先は空き教室だった。
中に入った恒星くんに続きボクも足を踏み入れてみる。
南に面したその教室は、陽が差し込んでいて暖かかった。
中には机が並べられていて、それの窓際の一番後ろの席に恒星くんは座ると、机に腕を置きその上に頭を伏せさせた。
「恒星くん? 何してるの?」
「見りゃ分かんだろ。寝るんだよ。だからさっさと教室戻れよ」
「お昼寝するの? もうすぐ授業始まるよ」
「サボる」
たまに午後の授業にいないのはここで寝てるからなんだ。またひとつ恒星くんの事を知れた。
恒星くんの前の席にボクも座ってみると、日が当たってポカポカして気持ちが良い。
後ろ向きになるようイスを動かして恒星くんを見れば、変わらず顔を伏せさせていて頭しか見えなかった。
「ポカポカだねぇ。ボクも眠くなってきちゃった」
恒星くんはボクの言葉に何の反応も示さない。もしかしてもう寝ちゃったのかな?
じっと観察していると、恒星くんの髪に光が当たってきらきらしてる。あの時と同じだ。
そっと手を伸ばして恒星くんの髪に触れた瞬間、手首を強い力で掴まれた。
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