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女刑事などあてにはならない。
最近の流行りだ。
だいたい刑事や警察は男所帯と決まっている。
「そのフォークを置いてください」
女刑事が言った。
「う、うるさい警察は帰れ」
「待ってください。斑目さん」
「その名前を呼ぶんじゃない!」
私は叫んだ。
嫌いなのだ、その響きが。
「なぜですか、あなたをどうお呼びしたらいいのですか?」
女刑事が睨んでくる。
「警察に話すことなどなにもない。消えてくれ。さもなければ、この娘を殺す」
女刑事が私を疑っているのは確かだ。
一瞬の表情を私は見逃していない。
フォークを持つ手が震えている。
少女を掴んだ手に力が入っている。
視線は女刑事を見詰めたまま、私は声をあげる。
「落ち着きましょう。先ほどのお話からあなたは、その子を助けたと私は認識しております。それがなぜその子を殺すことに繋がるのですか?」
「うるさい。黙れ。人が廊下に集まって来るだろう?」
「質問に答えてください。なぜ、そこまで怯える必要があるのですか?」
「いいから、出ていけ! 私は人が嫌いなんだよ。気まぐれで関わったばかりに面倒な説明させやがって。もういいいだろ。ほっとけよ」
私は喚いていた。
ますます、女刑事は狼狽えていた。
だが、私にはどうして女刑事が狼狽えているのか分からなかった。
私は、要求を通そうとしているだけだった。
この落ち着いた病室で本を読んでいたかっただけだった。
糞。
見舞いになど来るのではなかった。
気まぐれで、病室に居たことが不味かった。
だから、外はどうしようもない。
理不尽の固まりだ。
「彼女を放しなさい」
「ふざけるな。全部お前のせいだ。こうなってるのは、お前のせいなんだよ!」
「──」
「お前が消えればなにもしない!」
私の心臓が高鳴っていた。
久々に興奮していた。
怒鳴り散らすことが楽しいとさえ感じた。
「ちょっとすいません。うるさいので寝ててくれませんか?」
女刑事の後ろから影が飛び込んだ。
瞬間、痛みをどこかに感じてひっくり返った。
なにかが起きたことだけは理解したが、記憶が吹っ飛んだ。
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