1幕 容疑者の独り言

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女刑事などあてにはならない。 最近の流行りだ。 だいたい刑事や警察は男所帯と決まっている。 「そのフォークを置いてください」 女刑事が言った。 「う、うるさい警察は帰れ」 「待ってください。斑目さん」 「その名前を呼ぶんじゃない!」 私は叫んだ。 嫌いなのだ、その響きが。 「なぜですか、あなたをどうお呼びしたらいいのですか?」 女刑事が睨んでくる。 「警察に話すことなどなにもない。消えてくれ。さもなければ、この娘を殺す」 女刑事が私を疑っているのは確かだ。 一瞬の表情を私は見逃していない。 フォークを持つ手が震えている。 少女を掴んだ手に力が入っている。 視線は女刑事を見詰めたまま、私は声をあげる。 「落ち着きましょう。先ほどのお話からあなたは、その子を助けたと私は認識しております。それがなぜその子を殺すことに繋がるのですか?」 「うるさい。黙れ。人が廊下に集まって来るだろう?」 「質問に答えてください。なぜ、そこまで怯える必要があるのですか?」 「いいから、出ていけ! 私は人が嫌いなんだよ。気まぐれで関わったばかりに面倒な説明させやがって。もういいいだろ。ほっとけよ」 私は喚いていた。 ますます、女刑事は狼狽えていた。 だが、私にはどうして女刑事が狼狽えているのか分からなかった。 私は、要求を通そうとしているだけだった。 この落ち着いた病室で本を読んでいたかっただけだった。 糞。 見舞いになど来るのではなかった。 気まぐれで、病室に居たことが不味かった。 だから、外はどうしようもない。 理不尽の固まりだ。 「彼女を放しなさい」 「ふざけるな。全部お前のせいだ。こうなってるのは、お前のせいなんだよ!」 「──」 「お前が消えればなにもしない!」 私の心臓が高鳴っていた。 久々に興奮していた。 怒鳴り散らすことが楽しいとさえ感じた。 「ちょっとすいません。うるさいので寝ててくれませんか?」 女刑事の後ろから影が飛び込んだ。 瞬間、痛みをどこかに感じてひっくり返った。 なにかが起きたことだけは理解したが、記憶が吹っ飛んだ。
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