プロローグ

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それからの人生は、最悪だった。 「世莉果」 「世莉果、ちょっと来て」 「世莉果ー、一緒に帰ろう」 許さないという、あのときの言葉の通り、わたしに自由はほとんどなかった。学年の違いなど感じさせないくらい、ことあるごとに構われた。 それが、わたしを苦しめる要因になったのは、すぐにわかることだった。 「あなた、生意気なのよ」 「誠司(お兄ちゃん)が彰人くんの友達だからって理由だけで構われて」 「調子に乗らないでよね」 靴や体操着を隠されたり、教科書に罵詈雑言を書き込まれたり。 ドラマなどで見たことのあるような、陰湿ないやがらせを、ずっとされてきた。 こんなこと、だれにも相談できない。 数少ない友人に言っても、きっとあの暴君の表面に騙されて信じてくれないだろう。 何より、わたしの兄のいちばんの親友だ。わたしに対しての態度は最低でも、兄にまで酷いことをするほどのひとじゃないのはわかる。 わかるだけに、苦しいんだ。 小学生のうちはそれらを耐え、中高一貫の女子校に通わせてほしいと受験した。そうすれば、同じ学校に通うことはなく、わたしの存在に嫉妬する女子はいなくなると考えたから。 実際、彰人が小学校を卒業した後の2年は、まったくなくならなかったわけではなかったけれど、解放された気分だった。さらにそれ以上の幸福を得られると、ただ縋る思いだった。 だからきっと失敗してしまったんだと思う。
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