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「わたしがずっと、彰人くんのせいでいじめられてたの知ってた? 地味なやつが王子さまと親しくしてるのが許せないんだって、生意気なんだって、そんな理由でだよ? もう彰人くんに振り回されるのはうんざりなの。だからもう、わたしに関わらないで……」
感情に任せて出た言葉は、最後まではっきり言えずに終わる。気がつくとわたしは彼に抱きしめられていた。
「っ、彰人くん……」
「ごめん、おれが悪かった。おれは世莉果とずっと一緒にいたいし、離れたくない。だからそんな悲しいこと言わないでくれ」
「……」
彰人はすごい。大した演技力だとわたしは思わず感心してしまった。
こんな思ってもないことを、今まで横暴な態度を取っていたわたしにさえ言えてしまうのだから。
「……わたしも、本当は彰人くんと離れたくないよ」
何を思ったのか、わたしは彼に合わせることを選んだ。長らく近くにいたゆえの同情なのか、わたし自身の本音なのか、自分で判断したのにわからなかったけれど。
「ありがとう、世莉果。おれ、ちゃんと世莉果のこと守るから」
「……うん」
そして、わたしは久瀬彰人の彼女として、一躍有名人になってしまった。同じ学校に通っていなかったし、逆にそう明言されたことで中学時代は小学5・6年のときより少し楽に過ごせていたが、最後までその約束が果たされることはなかった。
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