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「……本当にここに来るんですか?」
「うん。もうすぐね」
大学生だから、てっきり居酒屋のような場所に集まるのだと思っていたから、高校生も普通に出入りするようなカラオケボックスにやってくるとは意外だ。
「何人くらいの歓迎会なんですか?」
「うーん。少人数なのは確かだったけどねぇ……」
「お待たせー」
そう言って入ってきたのは、男3人。その中には、彰人の姿はなかった。
「あ、きた。全員揃ったね」
「いや、あの、彰人くんが来てないですけど」
「まさか、本当に来るって信じてたの? 哀れなほどに生真面目なのね」
「うわー、おれ久しぶりに見たよ現役JK。しかもその制服って……」
彼らの会話なんて、もう今のわたしには聞こえない。最初から疑う気持ちはあったのに、逆らえなかった自分の過失だ。どうにかしてここから逃げることだけを考えていた。
「おっと、ダメだよ逃げちゃ?」
喋っている隙をついて脱出を試みたが、あっけなく失敗に終わる。
「久瀬くんにつきまとうあんたのこと、ようやく駆除することができてよかった。みんな、邪魔に思っていたのよ。本当によかった」
年齢が上がるにつれ、行動も大胆になることを、このとき、死ぬかもしれないと思う状況の中で思い知らされた。
ーー守ってくれるって、言ったくせに。彰人くんの、嘘つき。
この後すぐ、巡回かなにかをしていた店員さんが割り込んできてくれたおかげでなにもなく逃げ出すことができたが、もう何もかもがどうでもよくなっていた。
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