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二人の卒業式
その後、私は自衛隊に復隊した。勿論、移植した目ではパイロットに戻る事は出来ないけど、私には新しい夢があった。
それは創設されたばかりの災害救助犬チームにエスターと一緒に入る事だ。
エスターは視力を失っていたけど、その嗅覚は他の犬の数倍の能力を持っていて、彼の視力を私が補う事で充分に任務が可能と判断されていた。
そして私とエスターの災害救助犬としての卒業検定が始まった。それは私達にとって非常にタフな試験だったけど……。
その結果は……。
「山本理紗三等陸尉、そしてエスター号。右の者は陸上自衛隊第3期災害救助犬訓練課程を修了したことを証する!」
私達は見事、災害救助犬の卒業検定を合格し、卒業式を迎える事が出来た。二年前のパイロットの卒業式で涙を呑んだ私だったけど、新しい夢をエスターと一緒に実現する事が出来た事は本当に嬉しかった。
「エスター! 災害救助の任務、頑張りましょうね!」
私を見ながら尻尾を大きく振るエスターをギューっと抱き締める。
「ワン、ワン!」
盲導犬を卒業して吠える事が出来るようになったエスターはその喜びを全身で表していた。
FIN
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