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災害派遣
「大丈夫ですか?」
車が停まる音がして、背後から男性の声が聴こえる。私は色めきだった。これで彼女達を助けられる。
その時だった、余震と思われる大きな揺れが再び襲って来た。
横にやって来ていた男性が声を上げる。
「また崖の上が崩れている! 早くこちらへ!」
私はその男性に手を引かれ、車から離された。再び、大きな『ガラガラ』と言う音が聴こえて静かになった。
「ありがとうございます。でも車はどうなりました?」
私は手を引いてくれた男性にそう確認した。
「残念ですが、完全に土砂の下に埋もれてしまいました」
「なんて事、早く救助を呼ばないと」
「さっき、119番したんですが、地震の影響は広範囲で、道路も寸断されている様で、ここに直ぐには救助に来れないと言われました」
私は肩を落としていた。どうやって母娘とエスターを助ければ……。その時、私は一途の望みを思い付いていた。
「申し訳ありませんが、電話を掛けて頂けますか?」
その男性にお願いをすると直ぐに了承してくれた。番号を入力して貰い、電話を受け取る。
「はい、川橋です。どちら様ですか?」
「川橋三尉、私、山本理紗。この地震で航空救難隊のヘリに出動命令は?」
「理紗か。驚いたよ。ああ、さっき県知事から災害派遣要請が出た。今から官舎を出て、災害派遣任務に就く予定だ」
思った通りだった。でも被害が多い中、ここを優先して貰えるか分からないけど……。
「崖崩れで、車が巻き込まれたの。助けて、川橋三尉。お願い」
「分かった。基地司令に確認してみる。待ってろ」
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