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春
起きた直後はなぜか動けなくて声も出せず、ただ天井を見上げるだけだった。しばらくして着替えようと思って布団から出て鏡の前に立つと、そこには泣いている私がいた。
どうして泣いているの?
ふと鏡に手を伸ばし目の前の自分に手を合わせようとすると、下からおばあちゃんの声が聞こえる。
「咲来もう起きたの?朝ご飯できたよー」
「う、うん!今行くー‼︎」
そう言って私は白衣に袖を通し綺麗な緋色の緋袴を履いて、ギシギシとなる階段を降りておばあちゃんの待つ1階へと向かう。
「もう、10歳なんだから身だしなみくらいしっかりしなさい。」
おばあちゃんは私の格好を見るや、すぐに襟元を整えた。
「あはは、ごめんなさい。」
私にはお父さんやお母さんはいない。私が5歳の時に車の交通事故で死んでしまった。おじいちゃんも3歳、物心つく前に病気だったから覚えていない。だから、今はおばあちゃんが1人で私を育ててくれている。
おばあちゃんは神社の跡取りだったおじいちゃんに嫁入りしてきたらしい。だけど、お父さんが死んじゃったからこの神社をつげるのは私ただ一人。だから私は毎日朝、学校に行く前に神社のお手伝いをしている。
「それじゃあ、今日は神社の掃除をしてくれるかい?」
「わかった!」
そう言って私は目の前のご飯を口に入れ外に出た。
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