遠い目をしていた

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遠い目をしていた

公園を歩きながら、足元の散り始めていた落ち葉を見ていた。 私たちの間には当たり前だけど、少し距離があって、あのお試し後だと会話も弾むはずがない。 「なんか飲む?」 自動販売機を見つけたらしい我妻君が声をかけてくれた。 「うん、」 我妻君が500円玉を入れて、カフェオレのボタンを押す。 「好きなの押して」 「自分の分くらい自分で」 「なんかハズイ事させちゃったから」 「それは我妻君も同じじゃん」 「いいから」 そんな風に言われたら、断るのも悪い気がして、ミルクティ-を選んだ。 自動販売機はドリンクの下のボタンが点灯したままだったから、続けて我妻君が自分のドリンクのボタンを押した。私はお釣りのレバーを押して、出てきた缶を取り出していた我妻君に、お釣りを取りだして、渡す。 拡げられた我妻君の手は、思ったより大きかった。小柄とは言え、男の子の手なんだなって、ふと思う。 「何?」 「いや、手、大きいんだね?」 「普通じゃない?あっ、もしかして体の割にはってこと?」 「そうゆう意味で言ったんじゃないって。男の子の手だなって思っただけ」 「ゴメン、ちょっと僻みっぽかったよね?」 やっぱり男子で、背が低いってイヤなんだろうな。 「さっき言ったけど、私、3つ上の兄がいて・・・・」 いきなり話題が変わったから、ちょっと面食らったように私の方を見る我妻君がいた。 「160ちょっとしかなくて、小柄なの。私より低い」 「そうなんだ」 「入れ替わったらよかったのに、って周りからいつも言われてた」 「まぁ、そうなるよね」 「そのせいか、兄が大学生になるまで、かなり気まずくって・・・でもやっと最近、喋るようになったの。ずっと私の方が一方的に避けられてるって感じで」 「よかったじゃん、喋れるようになったんでしょ?僕は逆。弟がいるんだけど、昔から弟の方がデカくて。でも仲はいいよ。弟の方が身長のこと、気遣って触れないようにしてる感じなんだ。清原さんとこはお兄さんの方が気にし過ぎちゃったのかな?それって、性別違うからとかじゃなくて?兄妹でも、話せなくなる時期もあるしね。でも、その最近、話すようになったきっかけってどういう感じなの?」 「兄が大学に受かってからかな。そこは兄がすごくいきたがってた大学で・・・・優しくなったというか。多分、兄が自信がもてたのかもしれないなって・・・・だから余裕ができたっていうか・・・・私はまだ自信が持てるものがないから、正直、今の兄を羨ましいって思ってる」 「自信かぁ・・・・僕もなんかあるかなぁ」 二人でボトルのキャップを開けて、一口ずつ飲む。 今の私たちは、きっと可能性がまだまだ一杯あるのかもしれないけど、自信のないことも多くて、余裕もなくて・・・コンプレックスを克服できるだけの何かがまだ見つかっていなかったんだと思う。 そうなんだ、現在進行形の私たちは将来の自分たちの姿が描けなくて、自分にないものばかりに目がいってしまっていた。だから、二人して、ついつい遠い目をしていたのかもしれない。
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