カツアゲ

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私たちがゴミを捨てて、校舎に戻ると、教室では高崎君が帰り支度をしていた。 てっきり私たちが最後だと思っていたのに、まだ残っている生徒がいたんだ・・・・いや、もしかして違う? 一人だけ靴の向きが違った、円陣で囲まれていた生徒は、もしかして彼だった可能性もあるということ? 高崎君は同じクラスでも、あまり話した記憶がない。成績は上位だけど、地味な印象しかない。どちらかと言うと存在感のない、目立たないタイプ。。 「高崎君も遅かったんだね?」 我妻君が通常運転で、そう声を掛けるから、私も彼の方をマジマジと見てしまった。高崎君は明らかに顔色が悪かった。 もしカツアゲされた後だとしたら、しょうがないのかな・・・・ 「なんか、高崎君、顔色悪いけど、大丈夫?」 やっと私も彼に話しかけた。 「すぐ帰るから。大丈夫、ありがとう」 きちんと私の心配にお礼も言える子だったんだな。その時点で彼の印象は悪くなかった。今日はなんか、いろいろ発見が多い一日だ。そんなところに呑気に感心している場合じゃないのに。それでも、もしかして、同クラ男子って、皆、いい奴ばかりなのかな・・・・私の関心はどんどん違う所にいってしまう。4月の健康診断で身長のことを揶揄われて以来、良い印象がなかったから余計かもしれない。 「あの・・・・ゴミ捨ては・・・・」 「俺が行ったけど」 二人で行ったよね・・・・そう思って、我妻君の方を見た。 我妻君は高崎君の方を見ている。私はとりあえず口を噤むことにした。 高崎君がいきなりゴミ捨てのことを言い出すから、気の抜けていた私の神経が緊張状態になる。 なんでゴミ捨てなんかが気になるの? 「何か落とし物でもした?」 私は極力普通に聞いたはずだ。 「薬を・・・・今日、体調悪かったから、持ってきてたんだけど。ポケットに入れてたはずが落としちゃったらしくて。見なかったかなって思って」 「どんなの?」 我妻君が軽い感じで聞いてくる。 「赤いカプセルのやつで、小さな小袋に入れてあって」 「清原さん、見た?」 我妻君が私を見る視線が強い。合わせろってことか・・・・ 「私は気がつかなかったなぁ。具合悪いなら、保健室寄ってから帰った方がよくない?風邪薬なら、もらえると思うよ」 「いや、僕はあの薬じゃなきゃダメなんだ」 そう言う高崎君の顔色は青いままだ。 「えっと、本当に大丈夫?なんか、顔色、かなり良くないよ」 「大丈夫・・・・じゃないかもだけど。帰るだけだから。じゃ、お先」 高崎君は会話を断ち切って、慌てたように出ていく。 靴音の遠ざかる音を聞きながら、私はふぅっと大きな溜息をついた。 「僕たちも帰ろうか、清原さん」 そう言う我妻君はいつも通りだったから、ちょっと安心したんだけど。 彼は何も言わないから、結局私からは何も聞けず、その後は二人で黙々と帰る準備をした。
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