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様子見
「どう思う?」
私たちはファーストフードのお店に立ち寄って、ポテトを食べていた。
「とりあえず腹ごしらえ」
そう言われて、我妻君は有無を言わさず、私を学校から少し離れたファーストフード店に誘った。
学校では靴を履き替え、校舎を出るまでは私たちはほとんど一言も会話をしなかった。
何をどう話せばいいのか・・・・カツアゲされたかもしれない高崎君と赤いカプセルの薬を落としたという彼。我妻君はそんなものは見なかったと言い切った。とうことは、我妻君は高崎君がカツアゲされていたと確信している?もしそうなら、多分、いやきっと、あの赤いカプセルが原因だろうに。
「あれ、まだ我妻君のポケットにあるの?」
「うん」
「さすがに、落とし物として届けるわけにはいかなそうな雲行き?」
「だよね」
さっきの光景がフラッシュバックする。
「落としたじゃすまないんだよ」と凄んでいたのは、多分上級生。
ネクタイの色が分からなかったから、学年は分からない。
ウチの学校は学年ごとに男女ともネクタイの色が異なる。
入学から卒業まで同じ色のネクタイをつけるから、色で学年の種別がついてしまうのだ。
「カツアゲしてたのって・・・・上級生だったよね?」
「多分、2年。見たことのあるヤツが一人いた。多分バスケ部」
「そうなんだ」
「高崎が何かを落として、上級生に囲まれてたと・・・多分それがこれ」
「やっぱり高崎君だったの?」
我妻君は軽く頷くと、ポケットに軽く触れる。
「高崎君じゃない可能性はないのかな?」
「チラッと見えたし・・・」
我妻君はきっと円陣の中央にいた高崎君が見えたのだろう。そうなると彼が言っていることは確かだなぁ。
「となると、このカプラセルはただの風邪薬じゃなさそうだよね・・・・・」
「だよな」
「だよねぇ。どうする?ちょっとヤバくない?」
「う~ん・・・・」
「先生に届けるとか?」
「そんなことしたら、高崎の立場、もっと悪くなったりしない?」
「それはかなり・・・・ヤバそうと思う」
「でも、ずっと持ってるわけにはいかないよなぁ・・・」
会話がそこから続かない。これって結構、重めの話になってるよね?
「なんで我妻君は高崎君に黙ってたの?カプセルのこと・・・・」
「アイツ、最近ちょと変だったから。たまにガラの悪い先輩と一緒にいるとこ、見たことあったし。その先輩っていうのがバスケ部を辞めさせられたっていう噂のある人で・・・」
「辞めさせられたって、穏やかじゃなくない?なんで?」
「よく知らねぇ。でも、高崎のことは、ちょっと気になってたし・・・」
「なんか混み入ってるね」
「だなぁ・・・・」
私たちの会話は堂々巡りで、結局結論なんて出ないまま、当面、様子見ってことになった。
カプセルは我妻君預かりってことになったんだけど、それって大丈夫なのかな?ってちょっと心配になっていた。
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