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喉が渇きました
我妻君が昨日の高崎君とのやりとりの概略を話していく。
ゴミ捨てに行って、帰ってきたら、高崎君がいたこと。彼に風邪薬を知らないかと聞かれたこと。そして顔色がとても悪かったこと。
基本的に私たちは高崎君と特段、仲がいいというわけでもない。
私なんか、昨日高崎君と交わした会話が、多分、数回目程度だ。
ただ我妻君は薬のことは言わないつもりらしいことは察せられたから、私も合わせることにした。ゴミ捨ても彼一人。教室に我妻君が帰る途中に私に会ったという打ち合わせ通りの内容を、私も聞かれるままに答えていった。
もう一人の目つきの悪い刑事さん、小田川さんだったよね、がずっと私の様子を伺うように見ていたので、ちょっと居心地が悪かったけど。どうにかこうにか無事終了することが出来た。
私は高崎君が具合が悪そうだったので、保健室に行ったほうがいいってアドバイスしたことは勿論、嘘じゃなかったから、ちゃんと話せたし。
「ありがとうございました。何か思い出すことがあったら、ココに連絡ください」
そう言って、愛想のいいお兄さんの工藤さんが高校生の私にも、ちゃんと名刺を差し出してきた。私の人生で刑事さんから名刺をもらうなんて、初めてのことだったから、ちょっとドキドキしたけど、ついつい片手で受け取ってしまった。そしたら、隣で我妻君がちゃんと両手で受け取っているのを見て、作法を間違えたんだ、なんてどうでもいいことを考えていた。
よし、次の小田川さんの名刺はちゃんと両手で受け取ろうと思っていたら、小田川さんは軽く頭を下げただけで、名刺は出してこなかった。せっかく、今度こそって思ってたのに、この人は名刺くれないんだな、って思ったけど。
教室に戻っていいことになった私たちは、やっとその緊張感から解放された。私たちは校長室の扉を閉めるや、溜息をついた。
そしてそのまま何も言わずに歩き出す。
「清原さん、ジュース奢るから、自販機付き合って」
「うん。っていうか、今度は私が奢るし。あっ、でも、財布忘れた。ゴメン」
「今度でいいから」
そもそも我妻君とジュースを奢ったり、奢られたりっていう関係だったっけ・・・なんて余計なことをチラッと考えた。
私たちの会話は続かなくて、何もしゃべらないまま、自販機まで辿り着いてしまう。
彼がコインを入れて、「好きなの、どうぞ」って言うから素直にボタンを押す。
私が選んだのはただの炭酸水。なんか喉の辺りがムズムズしていて、さっぱりしたかったから。ムズムズしたのはちょっとだけ嘘、真実を言わなかったせい?
我妻君はいかにも甘そうなイチゴミルクのボタンを押していた。
「脳が糖分を要求している」
私が凝視してしまったせいだろう。彼は気恥ずかしそうにそんな言い訳を口にした。
「・・・・言わなかったんだね」
私がそう言うと、彼は頷いただけ。
「でも、もしかしてホントのこと言ってないの、バレちゃったかも。あっちの目つきの悪い、小田川さんだっけ、ずっと私の方だけ見てた」
「清原さんは落ち着いて見えたけど。僕の方がベラベラどうでもいいこと、喋り過ぎたかもしれない」
「バレたかな?」
「大丈夫だと思いたい」
高校生の私たちの演技レベルなんて、タカがしていることは、もうちょっとしてから証明されることになるんだけどね。だって、相手は嘘を見破ることには百戦錬磨の本モノの刑事さんたちだったんだから、敵う訳がない。
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