私たちのロミジュリ

我妻 湖雨＜わがつま こう＞

「159.5ｃｍ」

告げられた数字に肩を落とす。あれだけ頑張って好きでもない牛乳を飲み続けているのに・・・・160はいくはずだった。バレないように、気持ち、かかとを上げて挑んだ身体検査。それなのに検査員に即座に指摘され、かつ肩を思いっきり押さえられたせいか、去年より縮んているじゃないか。なんで・・・・・
ウチの両親は二人共平均身長より高めだ。特段、小柄な訳じゃない。弟は2つ年下の中学生なのにもう軽く160ｃｍを超え、もっと正直に言うなら170ｃｍに近い。せめて母親よりは背が高くなりたい。普通、父親の身長も超すのが当たり前の時期じゃないのか？高校1年にして既に伸び悩んでいる。なんで・・・・まぁ、ウチに既に父親はいないけど。

どうも身長があまり伸びそうにないなって自覚したのは、中学を卒業する頃だった。正確には自覚はしたくなかったんだけど。高校で伸びるかもしれないしね。でも、可能性がどんどん低くなってきているのをひしひしと感じている。
だから背が低くても、様になるスポーツって何だろうって、考えた。一応、これでも青春真っただ中の年齢だ。女子からモテるには、何かひとつくらい運動ができないと。小さい頃から体を動かすのが好きだったから、これでも必死になって考えたんだ。
イマドキなら、サッカー？さすがに高校からサッカーって、無理だろうってことで即却下。
後は一般受けはしないかもしれないけど、競艇の選手、競馬の騎手とか？
ダンスなら柔軟性があればどうにかなるか？
柔軟性なら、ちょっと自信がある。
昔から、ブリッジしながら歩くことも出来たし。あの足と手だけを地面につけて、背中を浮かすことで体をブリッジ（きっと橋っていう意味でいいんだろう）にする体幹エクササイズトレーニングね。長髪のカツラをかぶって、それをやった時は、『貞子』ってみんなにはやし立てられて、かなり受けもした。
ただ現実的に、ダンスは多岐にわたるし、競技人口も多すぎた。その上、ダンスは、音感ていうかリズム感も必要だってことも分かったし。歌とか、楽器とかって、人生であまりにも縁がなさ過ぎたし、今さら、ピアノを習うのもハードルが高い。それでも、高校が推薦で決まってから、時間を持て余し気味だった中学3年の時、半年くらいダンス教室に通ってみた時期もあったのだ。でもそんな動機だったし、元々それほど興味がなかったせいか、モチベーションもサキも見えずに、あっさり挫折した。
後、残るは武道系か。ちょっと古いけど、誰だっけ、そうそう、ジャッキーチェン？みたいな感じとか、空手家とか？
柔軟性を生かせる方がいいだろうってことで、ダンスを止めた後に少林寺拳法を始めて見たりした。
実力の程は・・・・まぁそこそこって感じかな。ダンスに比べれば、センスがないことはないらしい。
そして結局、高校生になってから決めた部活は拳法部。それほど厳しい上下関係や練習があるわけでもなく、いろんなスポーツを幅広く楽しみましょう的な感じの少しまったりとした活動内容が、一応、気に入っている。
要はその時の顧問の先生の得意分野次第で活動内容が変動する部活動って感じらしい。それは、入部した後に知ったことだけど。この際、なんでもいいか。

それにしても・・・・・健康記録カードを手に溜息も出る。もう少しくらい伸びてもいいだろう？
これでも特に健康に問題のない男子高校生だぞ。