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清原 留佳<きよはら るか>
「171㎝」
「えっ?測り間違いじゃないですか?」
思わずクレームをしてしまった。なんで、去年よりまた伸びてる?
「もう1度はかる?」
「お願いします」
気持ち膝を曲げようと試みたけど、すぐに先生に指摘されてしまった。
「きちんと立って。はい、171.5cm」
さっきより伸びてるじゃないかぁ。
なんで、なんで・・・・女子って生理始まったら身長伸びないっていうじゃない。
まだこれからも私の身長は伸びていくつもりだろうか。
さすがに靴のサイズが変わることはなくなったけど。今でも十分、自分に合ったサイズで可愛い靴を探すのは難しいのに。26.5㎝って、既に女子じゃないよねって言われたことがある。
がっかりと肩を落として、渡された身体測定の紙を見ながら溜息をつく。
物心がつくころには、すでに大きかったと思う。小学校の時は、私の席が前の方になったりすると、「清原さんが大きくて黒板が見えない」ってよく言われた。でも私は目があまりよくなくて、でもメガネをかけるのをためらっていたから、先生が前の方に席を変えてくれたりしたんだけど。結局後ろの方か、窓際、廊下側に席が決められることが多かったと思う。今はコンタクトをしているから、別に後ろの方でも構わないし、男子もかなり大柄な生徒もいるから目立たなくはなっているけど。
「ルー、どうだった?私、また全然伸びなかったよ。体重は増えてるのに」
そんなことを言う友人の上瀧 沙耶は可愛らしいなと思う。
よりにもよって、高校に入学してから初めて友達になった沙耶が150cmくらいしかなくて、彼女と歩くと私の大きさが際立つことになる。
私が「可愛い」と言われたのはいつが最後だったんだろう・・・・
昔から、背が高かった。
小学校の時から、子供料金で電車に乗ろうとすると、訝し気な視線を注がれた。
自動改札って、子供料金の場合は音がするから、なんとなく皆の視線を浴びやすいのに、それが私だったりすると余計なんだよね。
ランドセルを背負ってるときは、まだましだ。
ちょっと大人っぽい服を着た時なんて。だいたい、小学校の高学年になる前から、キッズコーナーでは袖の長さやスカート丈が足らないことも多かったから、どうしても大人の女性のコーナーを案内されることが多くなり、いわゆるレディース、つまりは婦人服を着ることになるケースがあったから。
靴のサイズも問題なんだよね。
バカの大足とか言われたこともあるし。
せめて、女子らしくとピアノを習い始めたものの、私は全く続かなくて、気がつけば、付き添いできていたはずの兄の方がドンドン上達してしまい、今となっては、その兄は音大に進学するまでになってしまった。
一方で、兄は体が弱かったから、少しでも健康になるようにと父が剣道を習わせていた。そして気がつけば、私が代わりに道場に通うことが多くなっていった。ピアノのセンスはなかったけど、こっちはかなりのセンスがあったらしい。昔、剣道の試合の時に兄に拝み倒され、小学校の時に兄の代わりに試合に出場してしまったことが1度だけあった。普通に勝ち進んでしまい、途中でこの状況がヤバイことになると気がついた私たちは、入れ替わりを諦めた。そして兄が出場した途端、あっさりと敗北した。もともと小学校までは男女の混合戦もあったから、兄の代理じゃなくて、ちゃんと私の名前で出場しておけば、そのまま上位戦までいけたのに。とはいえ、兄の名前でエントリーしていた試合だったから、後々、なんかのきっかけで疑惑をもたれるのも面倒だと思い、結局、二人で剣道を止めてしまったのだけど。あの時、続けていれば、少しは今でも様になっていただろうか?道場の先生に筋はいいって言われてたしなぁって。
「清原、でけぇな、171.5cmだって。我妻、少しもらってくれば・・・・」
どこで聞きつけたのか、多分、同じクラスの男子らしい揶揄うような声が聞こえてくる。我妻君って誰だっけ?あぁ、あの小柄な・・・我妻君らしい男子生徒が同じクラスの2,3人の生徒にこずかれている。
・・・・だからイヤだったんだ。
ここの学校は私の第一志望じゃない。男子の心無いあの手の言葉にどれだけ傷ついてきたことか。だから、せめて、高校くらいは女子校に行きたかった。一生に一度くらいセーラー服もいいかなって・・・・それなのに・・・・挙句が、入学早々の健康診断でまたこんな思いまでさせられて・・・やっぱり、この学校、大っ嫌いだ。
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