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羨ましい
清原さんは羨ましいぐらい背が高い。
それを彼女はかなり気にしているらしいことは、最近接点が増えたせいか、認識するようになった。僕からすれば、贅沢な悩み以外の何物でもない。
それなら、少しぐらい、僕にくれても罰は当たらないじゃないかと思うんだけど。
背が高ければ、大好きだったバスケを続けられたのに。そんな後悔が過ぎる。
それでも小学校まではそこそこ活躍できた。そんなにスッゴイ背の高いやつもウチの学校にはいなかったし。小学校では、これでも背の高い方だった時期もあった。
それにジャンプ力には昔から自信があったから。
でも中学になると、さすがに現実と向かい合わなければならなくなった。
ジャンプ力だけじゃ太刀打ちできない、高さという壁。
レギュラーなんて夢のまた夢になっていく。
引退まで続けてはみたけど、後輩たちにもどんどん抜かれていって、高校では入部すら諦めざるを得なくなった。
体が小さくても、遜色なく出来ること。そればっかり考えていた。
高校に入ってから、スケボでも始めてみようかとも思った時期もあった。格好いいじゃん?でも始めて間もなく、あざだらけになるだけで、どうも相性がよくないというのが分かった。大体、あんな小さな滑車の上でバランスをとって、ジャンプやら捻りを繰り出すって、どうなの?最近は結構人気があるらしくて、練習場所は結構混んでるし、騒音のせいか、公園で禁止されてるところも多いし。結論。僕には素養が無さすぎた。ダンスに次いでの挫折。続けられなかった言い訳を並べ立てるのは、負け犬の遠吠え的な感じか。何かを始めなきゃ、そう思って誘われるままに入った拳法部だったけど。分かってる、要はバスケを諦めきれない気持ちを引きずっているんだと思う。
僕も清原さんぐらい身長があればなぁ・・・・
衣装を着て、堂々と歩く清原さんの格好が最近、様になってきているような気がする。なんか、ひたすら妬ましい。
なんて狭量な・・・・
この前までは、何もかも恥ずかしがっていた彼女だったのに、いつの間にか、プリンス然としていて、そもそもロミオはプリンスではないけど。女子からも黄色い声が上がるようになってきた。
たどたどしかったセリフも、ちゃんと声が出てきているような気がするし。
その見た目、羨ましすぎる、羨ましすぎるよ。
なんか、僕の方が出遅れてない?
女性らしい仕草ってなに?鏡の前でしなを作ってみたりしながら、ちょっと悶々としていたら、安藤君から歌舞伎のDVDを渡された。
女形の研究をしてみろと言われた。
動きが柔らかい。いつもどうにか大きく見えないかと、必死になって体中に力を入れていた日常を過ごしていた僕は、力を抜いてみることにした。
元々、僕は柔軟性がある。関節の動きも滑らかだ。
ちょっと小首を傾げて、下から掬い上げるような視線・・・・
「我妻って、もしかして俺に気が合ったりする?」
ちょっとねっとりとした視線を同クラのヤツから送られた。
視線を送る相手は選ばなきゃいけないらしい。
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