回転

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回転

「まずはシチュエーション1。二人で寝転がりながら、グルグル回っている内に、気がついたら入れ替わっている」 仕切りはどうやら我妻君らしい。 「この状況で、それをやるのって、ちょっとハードル高いよね」 周囲を見回しながら、思わず漏れる本音だ。 「でもありがちなパターンだよね?階段から落ちたら入れ替わってたっていうのもあるけど、怪我したら後々面倒だし」 「確かに怪我は困るよね。学園祭近いし。主役二人でケガするとか、無理。打ちどころ悪かったりしたら、ヤバいし」 「うん、平地でグルグル回る所から頑張ってみよう。とりあえず二人であの草が生えてる辺りで横になってと」 二人で草の上に寝転がってみる。 周りにもレジャーシートをひいて、のんびりしている人たちもいるから目立たないだろうと判断した。 「お互い向き合って、肩に手を置いてみようか」 寝転がって、向かい合わせになっているこの状況は微妙過ぎる。 「あのさ、この状態でまわり始めるのって、難しくない?」 私は我妻君に指摘した。 「どっちかがとりあえず上になって、その勢いで回り始めてみる?」 「どっちにする?」 「う~ん、ジャンケンで」 「勝った方が、上に乗るってことでいい?」 「じゃあ」 初めがグーというお決まりなフレーズを私から言いだした。 「じゃあ、僕が勝ったから、上ね」 我妻君が私の横たわる体の上に乗る。 そして、その瞬間、二人共、いきなり気付いてしまった。 この状況がさっきよりもずっと、甚だ恥ずかしい状況だということが・・・・。 私の上に乗って、こちらを見下ろす形になった我妻君の顔がみるみる赤くなっていく。 きっと私も同じなんだろうけど。 気のせいか、周りから少し視線も感じるし。 「さっさと回ってみようか」 私が慌てて声をかけ、我妻君の肩に私の手をかける。 意を決したらしい、我妻君も軽く私の肩に触れてきた。 「せーの」 そう言って、1回転がると、今度は私が上になるわけだけで。 「我妻君、これって何回、回ればいい?」 「僕も分かんないけど、とりあえずあと2,3回、回ってみる?」 勢いで2回ほど回ったところで、私の上にいた我妻君の肩と腕が離れていく。 彼は私の上から上体を起こして離れると、私の脇に体育座りをした。 私も起き上がって、同じように座る。 「やっぱ無理だよね」 「だね、恥ずかしすぎる」 さっきから感じていた周囲の視線が強くなる。 居たたまれなくなった私たちはどちらからともなく立ち上がると足早に移動した。
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