軽蔑の眼差し 

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 「ふーん」と私は生返事をして、その話題はそれきりだった。正直なところ、私はウミのことを冷めた目で見ていた。ウミは友達で高校を選ぶような人間なのか。なんて浅はかでくだらないんだろうと。見下し蔑んですらいた。  余談になるが、私の進路変更には明確な理由があった。絵を描くことを続けたい。それが進路変更の理由だった。  K高は地元の中でも有名な進学校だった。後々大学に行きたいと考えていた私は、最初K高を志望していた。だけど、K高には美術部がなかった。好きなことを諦めて、勉学に勤しむ。  そんな高校生活を想像したら、ひどく味気なく感じた。その瞬間、K高への憧れは一気に色あせた。  自分が何をしたいかで私は志望校を決めた。それに対してウミは仲の良い友達が行くからという理由で決めた。自分の将来を友達で選ぶなんて、本当にくだらない。私なら一人ぼっちになっても、進みたい道を進む。  私は独りになることを、ちっとも恐れていなかった。独りになることよりも、好きなことができなくなることの方が怖かった。  ウミには譲れないものがないのだろうか。いや、ないからそんな稚拙な考えで志望校を選べるのだ。確固たる目的を持って勉強していた私からしたら、不愉快極まりなかった。  入試を終え、卒業式を終え、合格発表日になった。午前中、母と一緒にS高に合格掲示板を見に行き、自分の受験番号を見つけた。  正午過ぎ、合格書類をもらいに行くために中学校へ移動した。体育館に集められた皆は、馴染みの顔を見つけ合格の喜びを噛みしめていた。  体育館にウミの姿はなかった。そう、ウミはK高に落ちたのだ。
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