送別会の加害者

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 なんで。私はエリナに聞かれた質問に答えただけだった。ごく自然に言葉を吐いて、自分の素直な気持ちを口にした。ただ、それだけだった。それだけのつもりだった。 「なんでって、K高に魅力を感じなかったから」  私はクッキーに手を伸ばした。伸ばしかけたところで、異変に気付く。対面に座るウミが、目元を押さえ俯いていた。そして、喉の奥から絞り出すような声で言った。 「まだ、傷は癒えてないんだよ」  あ、しまった。  そう思ったときには遅かった。私がウミに何をしたか悟った。なんで、もっと敏感にならなかったんだろう。私が魅力を感じなかったK高。ウミの第一志望だったK高。ウミが落ちたK高。  私は本当にK高に魅力を感じていなかったから、素直に答えたまでだ。だけど、その本心がウミを傷つけた。私が魅力を感じていなくても、ウミにとってK高は魅力的に映っていたはずなのに。  そんなこと、火を見るよりも明らかなことじゃないか。私は無神経だ。最低最悪だ。 「ごめん」  そうやってすぐに謝れば良かったのに、私はそうしなかった。いや、できなかったのかもしれない。ウミをわざと傷つけようと言ったわけじゃない。だから、私の発言に過失はない。  それに、私は心のどこかでウミのことを「自業自得じゃないか」と罵倒していた。生半可な理由で受験したから落ちたんだ。友達を志望動機にしたから落ちたんだ。  私は自分の過ちを認めたくなかった。  だけど、すぐに謝罪できなかった一番の理由は、かつて描いていた彼女に対する尊敬が、恐怖や嫌悪、軽蔑に変わってしまったからなのかもしれない。
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