美術部の三人組

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美術部の三人組

 私は中学生のとき、美術部に所属していた。入部した理由は単純。絵を描くことが好きだったからだ。  美術部での活動は楽しかった。顧問の先生や友達、先輩に自分の描いた絵を見てもらえることや、上達していく技術を褒められることが嬉しかった。好きなことを好きなだけできる部活動の時間は至福の時間だった。  また、私が部活動を楽しいと思えた一つの要因に、友達の存在がある。私が部で特に仲良くしていた友達が二人いた。  一人目はアイだ。アイとは小学校が同じだった。家が近所で、お互いの家に遊びに行ったり来たりする仲だった。人見知りな私でもマイペースなアイの前では自然体でいられた。  二人目はエリナだ。エリナは部を通して仲良くなった子だ。大人っぽくって近寄りがたいというのが彼女に対する第一印象だった。しかし、話してみると思いのほか快活ですぐに意気投合した。  マイペースなアイ、快活なエリナ、少し人見知りな私。三人の性格はバラバラだったが、かえってそれが楽しく居心地が良かった。日当たりの良い四階の美術室、そこに私たちのかけがえのない日々が存在していた。  放課後、私たちはいつも一緒だった。少なくとも、中二の夏までは。
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