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ウミの入部
同級生のウミが美術部に入部してきたのは、中二の秋のことだった。
くりくりとした瞳に、綺麗に切りそろえられたショートヘア、小麦色に日焼けした肌。笑顔が絶えない大らかな子だった。
ウミとは一年のときに同じクラスだった。当時、彼女は学級委員をしていた。ウミが作るクラスの雰囲気はとても過ごしやすいものだった。
多くのクラスメイトがそう思っていただろう。ウミは人当たりがよく、どんな人にも分け隔てなく声をかける子だった。無論、私のような子にも。
よく気が回り、とにかく優しいウミが私は好きだった。また、何事にも積極的に取り組む姿を尊敬していた。
二年になってからは、別々のクラスになってしまったが、廊下や昇降口ですれ違えば必ず声をかけてくれたし、変わらず明るい笑顔を向けてくれた。
そんなウミが美術部に入部してきた。彼女は元々、陸上部に所属していた。しかし、少し前にワケありで退部したということをアイからそれとなく聞いていた。
運動部から文化部に落ちることは、珍しい話ではない。想像以上のハードさに勉強との両立が困難になったり、そもそも体力が追い付かなかったりして退部するというのはよく聞く話だ。
退部して帰宅部になる者もいたが、ごく少数だった。ウミがどのようなことを思って美術部に入部したのかは、定かではない。
ウミはすぐに美術部に馴染んだ。彼女は顔が広い方だ。大らかな性格も相まって、周囲も彼女を快く受け入れていた。
彼女が部にいることで何ら問題はなかった。ないはずだった。
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