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「ちょっと待って!」
下校しようとしていた1年生3人をなんとか廊下で引き止めた舞は息を整えてから口を開く。
「退部するって聞いたけど、ほんと?」
3人は無言で頷く。
「不満があるなら話を聞くから、考え直してもらえないかな?」
「しんどいんです。毎日基礎練ばかりで、中学からバレーボールやってた組には全然追いつけないし」
彼女たちはみんな高校からバレーボールを始めたばかりだ。バレーボール経験者の1年生7人がインターハイ予選に向けた練習に参加しているのに対し、基礎練習かボール拾いしかやらせてあげられていなかった。
「急には追いつけないけど、その分みんな伸びしろはたくさんあるよ。これから基礎練以外の練習にも参加してもらうつもりだし。もうちょっと一緒に頑張ろうよ」
「部長すみません。私たちじっくり考えて決めたんです」
「退部届は今週末までに提出します」
舞の説得も虚しく、3人は揃って頭を下げてから帰って行った。
(……なにをどうすれば良かったってーのよ)
ひとりとぼとぼと部室に向かって歩きながら、舞は自問自答する。
3人が考えた末の結論を変えられなかったのは仕方ない。
インターハイ予選に全力を注ぎたくて、あの3人の指導が後回しになっていたのも確かだ。
だけど、まるでそのことを責められているみたいで、すごくもやもやする。
自分だって万能じゃない。やるべきことに優先順位をつけただけなのに。
……結局、3人は舞に宣言した通り、週末金曜日に退部届を提出したのだった。
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