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夏のインターハイ、フェンシング競技初日。
ギラギラとした陽射しが降り注ぐ午前11時。舞はフェンシング競技の会場であるアリーナにひとりでやって来た。
会場に足を踏み入れた瞬間、カシンカシンと剣が交わる音や、電気審判機のブザー音があちらこちらから聞こえてくる。
2階の観客席は各校のフェンシング部の生徒たちや父兄で占められていて、舞は背中に光が丘学園高校と入ったジャージを着ている生徒たちとは反対側の観客席に座った。
今日ここへ来たのは、自分の練習が休みで、フェンシングにちょっと興味があったからだ。別日程で行われたバレーボールは部のみんなと見に行ったし。……なんて言い聞かせてはみても、本当の理由は潤を一目見たいだけだと言うことに、舞はとっくに気付いていた。
ひどいやつあたりをしてしまったあの日から、彼のことが頭を離れなくて。でもあの後一度も電車で会えなくて。
今まで誰かにこんなに会いたいと思ったことはなかった。
(ところで第10ピストってどこ?)
パンフレットに印刷されていたQRコードを読み取ったら、試合経過が確認できるサイトに繋がった。
それを確認してみたところ、予選は3分1セット5点勝負、6人総当たりでのプール戦。
潤が試合をしているのは第10ピストらしいのだが、何せ全員同じ格好をしている上フェンシングマスクで顔が隠れているので判別がつかない。
(……いた!)
ユニフォームの太もも周りに着けている“光が丘学園高校、白石”と書かれたゼッケンでようやく潤を見つけることが出来た。
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