第1話 黒川舞

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夏のインターハイ、県予選トーナメント2回戦。 セットカウント0対1。スコア21対24。 舞たちにはもう後がない。 (まだ終わりたくない) 3点ビハインド。絶対諦めるな。 サーブレシーブから繋げたスパイクは相手チームに拾われる。 ミドルブロッカーの舞は、相手のエースアタッカーがいるレフト側に向かって走った。 予想通り、相手はエースアタッカーにトスを上げる。 「せーのっ」 ライトプレーヤーと息を合わせてブロックに飛ぶ。 自分の指先がボールに当たった。 ……いや、当てられて弾かれた。 舞は叫ぶ。 「ワンタッチ!」 レシーブ位置よりも遥か後方に飛んだボールをリベロが追う。 滑り込みながら必死に伸ばした手のひらの先、無情にもボールはポトリと落ちた。 ピピーッ! 主審が試合終了を告げるホイッスルを鳴らす。 同時に光ヶ丘学園高校女子バレーボール部の、インターハイへの挑戦が終わった。 翌週、3年生が引退し、2年生主体の新体制初日。 「……は!?3人辞めるってどういうこと?」 部室の鍵を職員室まで取りに行く途中、1年生のひとりから報告を受けた舞は思わず聞き返した。 「経験者には追いつけないからって言ってました」 「舞、どうする?」 「まだ下校してないよね?練習前に話してくる。部室の鍵よろしく!」 副部長にそう言い残し、舞は1年生の教室がある2階にダッシュで向かった。
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