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第1話 黒川舞
クラスの中での立ち位置は「しっかり者のお姉さん」キャラ。
頼られることが嬉しくて、ついつい自分の気持ちは後回し。
だからほらいつも私の恋って、始まる前から終わってる。
(……いい加減このパターン脱却したいなあ)
部活帰り、駅のホームで電車を待つ黒川舞は深いため息をついた。
部活終わりの部室内、女子バレーボール部の部員たちと、同じ部室を使う男子バレーボール部のマネージャーさんたちは、よく恋バナで盛り上がっている。
何なに先輩(あるいは何なにくん)格好いい、といった軽いものから、誰が誰に告白したとか誰と誰が付き合い始めたとか、いつどこから情報を仕入れているんだろうと思うものまで。
そういう話題に疎い舞は、いつも制服に着替えながらみんなの話に耳を傾けふんふんと相づちを打つのだけれど。
「鈴先輩、青井先輩と付き合い始めたって本当ですか?」
後輩の問いに「うん」と答える翠川鈴の声に、胸の奥がツキンと痛んだ。
(………なんだろ今の?)
いやいやいや、そんなまさか。
男子バレーボール部の青井翔。
2年に進級した春に部長になった者同士、話しやすい関係ではある。
誰とでも爽やかな笑顔でコミュニケーションをとって、見惚れるような美しいセットアップでスパイカーに気持ち良く打たせる姿は、確かに格好いいなと思うけれども。
男子バレーボール部マネージャーの翠川鈴は、同性の舞から見ても小柄で可愛い。そしていつも部員のみんなに気配りして、それとなく動き回ってる。
……うん。青井くんの“彼女”って言葉が良く似合うのは、どう考えても鈴ちゃんだ。
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