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テレビ、雑誌、ネット配信で日々、世間にその美貌を惜しげなく曝す美容家、佐井友理奈30歳。 彼女がひとつ美容法を指南すると‘元々綺麗だからよね’というやっかみを寄せられるのは避けられないが、そうしながらも活躍の場は広がる一方だ。 今では彼女の監修した美容液が発売されるなど実業家としても歩み始めた。 何もかも順調に事が運び、30歳になった今も美貌を売りにしている友理奈は、朝起きてから寝るまでの間に全身へ多くの手入れを欠かすことはない。 「蜷川朱鷺、返事くらい返しなさいよ」 風呂上がりの顔から首までをすっぽりと美容パックに包んだ友理奈は、自分が送った返信の来ないメールを見つめる。 友理奈は1年間だけイギリス留学経験があり、その時同じく留学していた蜷川朱鷺と知り合った。朱鷺は高校から大学までをイギリスで過ごしていたので、彼にすれば友理奈のことは何人もの日本人短期留学生と話したうちの一人に過ぎないだろうが、今の友理奈にすれば新しいビジネスチャンスを求めて声を掛けてみる価値は十分にある相手だ。 「朱鷺が無理なら美鳥にメールしてみるか」 朱鷺と一緒にイギリスに渡り生活していた妹、美鳥とも会ったことはある。美鳥は現在、朱鷺の秘書だというから美鳥に連絡するのも方法だと考え、自分のブランドの基礎化粧品を初めて発売するのでホテルに置いてくれないか…そういった旨のメールをNinagawa Queen's Hotelの代表アドレスへ、Chief Exective Officer付き秘書 蜷川美鳥宛で送信した。
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