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「ここにもないな」 そう言いワインリストをそっと置いた眉目秀麗、いや、容貌魁偉という方がぴったりの男は柏木龍之介。 山梨県の‘オークワイナリー’創業者の玄孫で、そのワイナリーは現在国内のワイナリー最大手に成長した。龍之介はワイナリーのある地元にいることは少なく、国内外への販路拡大、在庫管理等を担当し東京のオフィスで働くことがほとんどだ。そのため地元で資産家である柏木の屋敷とは別に東京にマンションを持つ。 そして彼は今‘Ninagawa Queen's Hotel’内の会席・懐石料理店で秘書のような相棒、谷川道弘と向き合っている。 「このホテル、あちこち地域も食事の種類も変えてこれだけ回っても国産ワインは扱ってない…決定だな、龍之介」 「そうだな。アプローチしてみるか」 「どのレストランも文句なしの一流で、贅沢な仕事だったよ」 「リサーチは重要だから当然だ。今日は日本酒にするか?それとも和食に合うワインリストからワイン?」 この半年ほど全国の‘Ninagawa Queen's Hotel’に毎週のように訪れ、フレンチ、イタリアン、鉄板焼、中華、日本料理…どのレストランにも行ってワインリストをチェックした。しかし、そのどこにも国産ワインがないことが確認出来たので新規販路として開拓する対象に決める。 翌日、龍之介はNinagawa Queen's Hotelの代表アドレスへ、Chief Exective Officer蜷川朱鷺宛に1通のメールを送った。オークワイナリーのワインを飲んで頂き、ホテル内レストラン及びバー、またルームサービスのワインリストに加えて頂けるよう検討願いたい旨のメールに、若きホテル王と呼ばれる男は応えてくれるだろうか?
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