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残暑の中、家路を急ぐ人の群れ。
ふと見上げた上空には微かな風が吹いているようだ。
ヒラヒラと一枚の葉っぱが風をつかまえて舞い降りようとしていた。
みつけた。
グレーのサマースーツがヒラリとはためく。
風を手放した一枚の葉。
真夏の緑を薄めて仄かに色に染まり始めている。
スーツのポケットにふわりと滑り込む。
電車に揺られて、明かりのない部屋に着いた。
ベッドに放り出されたスーツの中には何も見えない。
言葉のない時間が過ぎて浅い眠りについたようだ。
ねえ、気がついてよ。
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