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すると聡美が続けて言った。
「キーチ。お前も花人やと聞いた。それも【外道】で【ヤマユリ】の血を引いとる。まるで、運命や。俺はお前の話を聞いた時から思っとった。ああ……俺とそいつはなにかしらあるな、と。俺はな……、やくざじゃ。なんでか解るか。金が欲しいからや。十二でやくざの使い走りをしてな、十四でやくざの下っ端になった。十五で人を刺して少年刑務所に入った。そんでな……儂はまた悪さを企んどる……」
にこり。聡美が笑うと少し、彼から百合の匂いがする気がした。
「キーチよ。なんで俺が金が欲しいか解るか?」
「……わからん」
「ほうか。ほうなら教えたる。俺達のな……両親がいた村は京都の丹波というのは聞いてるか」
「うん」
「そこをお偉いさんがゴルフ場にする、ちゅうて俺らの親は追い出されたけどな……。まだ、村の跡地は手つかずなんじゃ……あんまりにも奥地すぎてなあ……ゴルフ場の中で放置されとる場所なんじゃ」
「え」
「俺はそこを買いたい。どうや……お前も帰りたないか……?お父ちゃんお母ちゃんが帰りたがってた【お山の中】に行きたくないか……?」
「……」
喜一は黙って、頷く。
言葉を発してしまえば、なにか……涙が零れる気がしたからだ。行きたい。お父ちゃんとお母ちゃんが焦がれた故郷へ帰りたい。
「ほうか」
聡美は笑った。
そして、言った。
「キーチ。俺と一緒に、悪い道、歩こ?」
まるで買い物に付き合ってくれ、とでもいうような気軽で甘えた物言いに、喜一の頬もほころんだ。
そして、もう一度強く頷いた。
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