幼少・少年編

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乱暴にドアが開け放たれた、瞬間に。 ぞわっ、と喜一を悪寒が包んだ。 両親も、喜一も。 時が止まったように体が動かなくなった。 のそり、と入ってきたのは大柄な、ぶどう色のペイズリー柄のチョッキを着た男。次に、灰色と銀をまぶしたようなスーツの男。 先に口を開いたのはチョッキを着た男だった。厚めの唇が、にや、と横に広がった。 「おいおい……同士の一条君よ。どうやら我々はすんでの所だったようだぞ」 灰色と銀のスーツの、一条と呼ばれた男は頷きながら、すん……と鼻を鳴らした。 「そのようだな。ふむ……これは驚いた。まさか本当に【ヤマユリ】の花人が飼われずにいるとは……すばらしいな、三ノ宮君。さて……君はどちらにするかね?」 「うーむ、悩むところではある。前の【キキョウ】の時は男だった。その前の【ツバキ】は女……。では、俺は女にするか」 「そうか、奇遇だな。私はしばらく女の個体が続いたので、男を飼いたいと思っていたのだ」 「それはそれは……良き事だ。俺とて、喧嘩はしたくはない。なにせ、負けると決まっているからな」 「ふふふ……そうとも。私は君より【血の位】が高い。【決闘】をしたとしても……欲しい物を手に入れるのはこの私なのだ」 「まさしく。」 その男達の会話は自分本位で、自分勝手だった。目の前で人間が人間の首を絞めているというのに。 そんなことは意にも介さず、どちらがどの花人を飼うか、と相談し合っているのだ。ひどい、と思った瞬間に外で銃声が響いた。 なんだ、と思っている内に足音がやってきて、玄関ごしに、声が聞こえた。 「一条様!三ノ宮様!反逆者を【処分】致しました!死体はどのようにしておきますか!」 「ふむ、衣服を剥いで、吊るしておけ。龍人を殺そうと企んでいた組織の人間だったと……そう、流布(るふ)するのも忘れぬように。ふん、耕人の雌ごときが私のスーツに触れた。汚れたあの手で、触ったのだぞ?その行為は死に値する。そうは思わんか、同士」 「おう、まさしく。君の衣服一揃え、耕人の人生が一回は働かずにゆうに暮らせる値段の代物だ。そんなものに触れたので……奴は幸せ者だろうよ。死んで本望だ」 「ふふふ……上手いことを言ってくれる」 「ははは……世辞(せじ)がうまい」
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