幼少・少年編

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「いや……しかし……。【ヤマユリ】は西園寺一族が根こそぎ回収していたと思ったが。まさか二株も残っていたとはな。わざわざ東京からきた甲斐があったという訳だ」 「まさしく。あそこは特に【ヤマユリ】と相性が良いので財力に物を言わせて奪っていったのだ。真に暴挙としか言えんやり方だった。高貴な家柄ならば、フェアーにやっていただきたいものだ……」 「まあ、血が濃いというのは喜ばしい事だ。良い子が生まれ、血も濃くなれば……」 「そうだな、同士。血は濃くあるべきだ……」 ふふふ……、と二人は笑い合い、そして喜一と両親の方に向き直った。 彼等の目には一体何が見えているんだろうと、喜一は思った。 彼等は、自分の両親のことを【二株】と言ったのだ。それは、まるで本当の、花に対する数え方ではないか。 否。 きっと彼等は、自分たちの事を【花】だと思っているのだ。 花には痛みも、悲しみも感じないと思っている。 ただ戯れに野花をぽきん、と手折ったとしても。 自分達は家に綺麗な花を飾る事が出来た。ただそれだけのことだ。 花には痛覚などはない。 むしろ、綺麗と思われて、自分達の家の花瓶に入れてもらえて結構なことではないか。そうとすら思っている節がある。 (ちくしょう) 喜一はまた、涙が出た。 だが、それだけだった。 他に何もできなかった。 龍人達が歩いてくる。 父も、母も、なにも出来ない。 母はもうすぐ死ねたのに。 後、少しで逝けたのに。 後、もう一押しが出来ぬのだ。 父の指はぴくりとも動かなかった。 母の目から、一粒。 父の目からも、一粒。 涙が混じった。 「つるえ……ごめんな……」 「あんた……好きよ……」 両親が笑った。 それから、龍人達は無造作に父と母を引き剥がした。一条と呼ばれた男が父を、三ノ宮と呼ばれた男が母を。 犯した。 喜一の目の前で、正常位で犯した。父と母を、その場で犯した。前戯もなく、ただ挿入して、抜き差しをしている。両親が悶えていると「はははは」とどちらが言うでもなく、龍人達がぞっ、とする響きで笑った。 彼らには両親達の痴態が愉快に見えるらしい。父が泣いている、母が泣き叫んでいる。悔しいのに、喜一はピクリともできない。 「うっ」と声が聞こえて三ノ宮が射精をして、母の中で、達した。 「ははは、早いな。三ノ宮君」 「ははは、なかなか、具合が良い。そちらはどうだ」 「うん、こちらも、良く締まる。だが……こちらも負けてはおられん。こいつをうんと啼かしてやりたいからな」
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