108人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや……しかし……。【ヤマユリ】は西園寺一族が根こそぎ回収していたと思ったが。まさか二株も残っていたとはな。わざわざ東京からきた甲斐があったという訳だ」
「まさしく。あそこは特に【ヤマユリ】と相性が良いので財力に物を言わせて奪っていったのだ。真に暴挙としか言えんやり方だった。高貴な家柄ならば、フェアーにやっていただきたいものだ……」
「まあ、血が濃いというのは喜ばしい事だ。良い子が生まれ、血も濃くなれば……」
「そうだな、同士。血は濃くあるべきだ……」
ふふふ……、と二人は笑い合い、そして喜一と両親の方に向き直った。
彼等の目には一体何が見えているんだろうと、喜一は思った。
彼等は、自分の両親のことを【二株】と言ったのだ。それは、まるで本当の、花に対する数え方ではないか。
否。
きっと彼等は、自分たちの事を【花】だと思っているのだ。
花には痛みも、悲しみも感じないと思っている。
ただ戯れに野花をぽきん、と手折ったとしても。
自分達は家に綺麗な花を飾る事が出来た。ただそれだけのことだ。
花には痛覚などはない。
むしろ、綺麗と思われて、自分達の家の花瓶に入れてもらえて結構なことではないか。そうとすら思っている節がある。
(ちくしょう)
喜一はまた、涙が出た。
だが、それだけだった。
他に何もできなかった。
龍人達が歩いてくる。
父も、母も、なにも出来ない。
母はもうすぐ死ねたのに。
後、少しで逝けたのに。
後、もう一押しが出来ぬのだ。
父の指はぴくりとも動かなかった。
母の目から、一粒。
父の目からも、一粒。
涙が混じった。
「つるえ……ごめんな……」
「あんた……好きよ……」
両親が笑った。
それから、龍人達は無造作に父と母を引き剥がした。一条と呼ばれた男が父を、三ノ宮と呼ばれた男が母を。
犯した。
喜一の目の前で、正常位で犯した。父と母を、その場で犯した。前戯もなく、ただ挿入して、抜き差しをしている。両親が悶えていると「はははは」とどちらが言うでもなく、龍人達がぞっ、とする響きで笑った。
彼らには両親達の痴態が愉快に見えるらしい。父が泣いている、母が泣き叫んでいる。悔しいのに、喜一はピクリともできない。
「うっ」と声が聞こえて三ノ宮が射精をして、母の中で、達した。
「ははは、早いな。三ノ宮君」
「ははは、なかなか、具合が良い。そちらはどうだ」
「うん、こちらも、良く締まる。だが……こちらも負けてはおられん。こいつをうんと啼かしてやりたいからな」
最初のコメントを投稿しよう!