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自分以外の百合の匂いがする体臭を嗅いだのは久しぶりだった。安堵する、その芳香が強くなるのは、その体臭の持ち主が喜一の体を抱きしめたからだった。あたたかな体温が、喜一を包む。
「一人でよう頑張ったな、キーチ。これからは俺がおるからな……」
百合の匂いと、百合の匂いが、混ざる。
溶けあうようにして、混ざる。
それは喜一にとって初めての感覚だった。聡美、二十歳。喜一、十五才。お互いに年齢よりも老けてはみえるが全ては壮絶な生い立ちのせいだ。聡美も喜一のように目の前で龍人に両親を犯され、項を噛まれる様を目撃した。唯一、幸運だったことは、外見が【外道】であったことだ。もしも、花人の容姿であれば、聡美も喜一も無事ではすまなかっただろう。
喜一には花人の知り合いはいた。外道の仲間もいる。
だが、同じ百合の匂いのする花人とは両親以外では、初めてのことだった。
匂いが混じる。一体になる。どうも体の中がむず痒い。取り出して、掻いてしまいたい。この痒みはなんなのか。そう思った瞬間に、どろり、と股から体液が零れるのを感じて喜一はぎくり、とした。まさか。発情期はまだ先の筈なのに。それに、男性器も、次第に熱を持ってきたような気がする。ひどく、体が火照ってきている。戸惑う喜一をなだめるように聡美が頭を撫でた。
「怯えることはなにもないんやで……。これは当たり前なんや。自然にやってきたことなんやで……花人はな……気持ちいいことが大好きや。花が、我慢を知っとるか?草木が若芽をつけるのを嫌がるか?そんなことはあらへん。俺らも一緒なのや……。ただ、体をゆだねて……快楽にふける。それのなにが、嫌なんや……」
「嫌とか、そんなんやあらへん……ただ、おかしいと思う……俺らは男やろうが」
「男が男を抱いてはあかんか。男が男に抱かれてはおかしいか、キーチ」
爛々と、聡美の目が光る。それを見つめていると、何の反論も出来なくなってしまう。
そう思っていると、自分の唇に、聡美の唇が重なった。生温い、舌が自分の口に入ってくる。唾液を少し飲み込むと、なんだかどうでも良くなってきた。心地は意外と悪くなかった。ぬちゃぬちゃ、くちゅくちゅ……舌と舌が水音を立てるのを聞きながら、喜一は服を脱がされた。下着一枚。その布の中に、男の手が這う。尻の合間に、入ってくる。ぐぷり……と指が喜一の尻の穴に侵入した途端、頭が痺れるような快感を覚えて身震いをした。それに気が付いた聡美が少し笑って唇を離し、喜一の穴を弄んでいる手と反対の手で喜一の手を掴んで自分の尻に誘導した。
「ほら……触ってみ……。俺も濡れとる……股から女の様に愛液が出る……。中に、指を入れてみい……」
「うん……」
喜一は素直に頷いて、聡美の穴に、指を入れる。
あたたかい。単純にそう思った。
「ほら……手を動かして……気持ちよくなろうや……」
艶を含んだ声が喜一を誘う。
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