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高らかに笑う聡美に、喜一は多少、ぞっとした。「あかん」という間もなく、激しい腰振りを始めたからたまったものではない。喜一は奇声を上げながら花の刺青をした体に抱き着いて、狂乱の嵐のような快楽に溺れ、そして沈んだ。
夢も、見ない、真っ暗闇。そこに一人漂っている、そんな感覚が少しあってから、股間がぽわぽわと温かくなってきて、気持ちよさまで感じ始めた時、喜一は目を開けた。
「お……目ェ……覚めたか……」
そう言って先ほどと変わらない笑顔で聡美は喜一の目覚めを喜んだが、どことなく喜一は違和感があった。どこが。
それは聡美の位置だった。
「何してるんや、あんたは……」
「うん……?ナニしてるんやでえ……」
そう言って聡美は喜一の上に馬乗りになり、喜一の男根を自分の穴に挿しこみ、ゆらゆらと腰を動かしていた。
「俺も……欲しい……男の、ちんぽ……咥えとうて……うずうずしとったんや……ああ……キーチ……お前のチンポは固くてええのう……最高や……。どうや。目ェ覚めたんやったら、俺にもキツイ一発食らわしてくれへんか……」
「あんたも、尻の穴で感じるんか」
「当たり前や……俺をなんやと思っとる……」
「花人やろ……」
「そうや……お前と一緒や……」
うっとりとしながら喜一の男根をゆらゆら貪る聡美は、綺麗だった。だが、男のままだった。
それを、喜一は犯したい。喜ばせたいと心底思った。
百合の香りが、濃くなる。
まるで、ここは、【襖の向こう側】だ、と喜一は思った。
発情期を迎えた両親の真似事。今、それをこの男と行っているのだ、と解った瞬間、胸のつかえがストン、と落ちた。
(俺は……こいつと、こうすることが、当たり前なんや)
涙が、出た。
出たがもう口惜しくはなかった。
「どうしたんや、キーチ」
聡美が心配してくれる。それをありがたく思った。乱暴で腕で目を擦り、「なんでもない」と言ってから聡美を押し倒した。
そして、聡美に挑みかかりながら、言った。
「今度は、俺がお前に天国見せたる……!」
「楽しみやの、キーチ」
そして、二人は上になったり、下になったり、笑いながらまぐわって、疲れて、寝た。
その晩の喜一は、夢を見なかった。
ただ、疲れて眠って朝が来ただけだった。
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