青年編

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「くはああ……っ!キくううう……っ!ああああ、脳髄までキてるでえーー!」 「キてるか、サト兄!」 「あ……っ、ん……動かしたらあかん……おかしくなるからあああ……」 「おかしくなれや……!キメたろっ!」 「ぐああ……!」 バックからガンガン、突くと野崎の体が途端に浮いた。背中をのけぞらせて逃げようとする。自分が兄と慕う男の頭を握って、市川は玄関のドアに押し付け、思い切り腰を振る。これ以上ないと言う程に犯しまくると、いつもすました顔をしている男が泣く、それがどうしようもなく、心地よくて、もっと、気持ちよくさせたくて乱暴にしてしまう。 「あかんで、逃げたら……!」 「あかん……!クる……クるうう……!」 「サト兄……!山に、いくで、いくんやで……!」 「イクッ、イクッ、イクッウウウウ!」 市川が一際深く奥へ突き込んだ瞬間、ぐわっ、と野崎の尻穴の肉ヒダが性器を包み、そして緩んだ瞬間に市川は大量の精液を野崎の穴に流し込む。その途端、びくびくびくっ!!と痙攣した野崎が放出したのは精液ではなく、匂いのない、水のような小便だった。 お互い荒い息の中、最初に正気に戻ったのは市川だ。 「なんや、兄さん漏らしてしもたんか……」 「あっ、あっ、あっ……」 「白目剥いて……なかなか戻ってこれへんやつかあ……」 市川はわざとらしくしょうがない、とため息をついて、痙攣している野崎を抱きかかえて玄関のそばにそっ、と寝かせてやると台所で盥たらいに水を汲んできて玄関の扉を開けて水を玄関のたたきに豪快に流した。掃除は済んだ、とばかりに盥を放り投げ、今だ現世に戻ってこない野崎の体にのしかかる。そして、股を広げると、また固くなってき始めた性器を緩んだ野崎の尻の穴に突き入れる。ゆるやかに腰を振っていると、徐々に意識を取り戻した野崎が「ん……」と声を出し、正気付くと、お構いなしに腰をふる市川に眉を潜めて、言った。 「お前なあ……人がトんどるというのに……、ひどいやつや」 「トぶのがおかしいわい。しょんべんまで漏らしよって……」 「ははは……漏らしたか」 「漏らしたどころの騒ぎとちゃうど。洪水やった」 「ほうか……そりゃあすまんかった……。なあ……キーチ……俺は嬉しいんや……」 「わかっとる」 「うん……そやけどなあ」 「わかっとる。あんたの言いたいことは、俺には言わんでもええ……俺も同じ気持ちやから……」 「ほうか……。嬉しいなあ……嬉しいなあ……」 野崎は腕で両目を覆いながら、泣いた。 元来優しい男である。 乱暴者であるが、金を作るために大阪へ行き為した悪行、心を鬼にして全てを無にして、山を買うという執念だけで野崎と市川はここまで走り抜けたのだ。 ほっ、とした気持ちが野崎を泣き虫にしている、と市川は解っていたのでなにも言わなかった。ただ、抱いた。泣きじゃくる野崎の体を抱いていた。
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