幼少・少年編

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笑い合いながら全裸の母が喜一の前に立ち、全裸の父が喜一の背後に回る。そして、母の指が喜一のまだ未熟な性器に触れ、掴み。ゆっくりと扱いていく。そこに性的な物はない。赤ん坊に乳を飲ませるような、そんな意味合いで母は喜一の性器を擦る。そして父が喜一の濡れた股に唾液で濡らした指をそっと差し込む。つぷん、と第一関節まで入ったそれは、確かに喜一に性的な快楽をもたらした。 父が指を喜一の中で動かしながら囁いた。 「山の中ではな、股が濡れる事を【準備ができた】というのや。それはな、キーチの体が大人になって……女の子に子供に授けるのも出来るし、キーチも、子供が産めるようになるということなんやで。ああ……キーチにも見せたかったなあ。お山の中でな。耕人が段々畑を作っていた跡があって……、そこにな……大きな山椒の木が植えてある。心地の良い湿り気のある苔がぎょうさん、生えててな……。そばには小さな滝があるのんや。段々畑、見上げるほどに、階段のようになっていて……ふかふかの苔が生えていて……発情期がきた子はそこで相手を待つんや。沢蟹もいてな……。まぐわいをしている最中にちょこちょこ……と通る。赤いのやら、白いのやら……それがなんとも微笑ましくてな……。風が吹いたら山椒の清涼な香りが心地よくって……なあ、つるえ」 「そうやねえ、あんた。帰りたいなあ。あそこやったら……うちらがキーチにしてあげんでも、若いおなごが手ほどきしてくれたのになあ……」 母は、少し目を潤ませながら、キーチに初めての射精を施した。そして父がどのようにして尻の穴で感じるかを伝授した。花人ならば当たり前のことだ。自分が性に弱い生き物ならば、常日頃から性に慣れておくべきだと両親は思っていた。キーチは両親に教えられるままに自分で自慰をしてみたり、父の指で、お尻の穴の奥の快楽に驚きながらも、それを感じた。 「キーチももう、大人になったねえ。これで発情期が始まったらみんなで三日、引きこもろうか」 母がからかうと父は笑った。それから少し怖い顔をして言った。 「キーチ。これから言う事を良く覚えておくんやで」 「うん、お父ちゃん」 「あのな。キーチは子供が産めるようになった。そうやけど。それは龍人とだけなのや」 「花人とは子供が出来ひんのか」 「そうや。そしてな……」 「うん」 「絶対に龍人とは会ったらあかん」 最後の言葉は、特に厳しい含みをもった言い方だった。父の顔が段々険しくなるのに怯えながら喜一は「なんで?」と口にする。 「なんで、龍人とは会ったらあかんの?」 「あいつらはな、僕らを人間と見ていないんや。あいつらは自分の種族と番う事が難しい。誰も彼もが王様やからな……。王様と王様が夫婦になることはありえへん。王様は、常に弱い者を番にする。特に。好むのは僕ら花人なのや。それにな……龍人に項を噛まれてしもたらな……終わりなんや。僕らは正気が保てへんようになる。項を噛んだ龍人が好きで好きでたまらへんようにさせられてしまうんや」 「そんなん……こわい……」 「大丈夫や、龍人は位の高い生き物やから、滅多に耕人の街には出てこおへん。ましてやこんな辺鄙な街にはな……。それにな……」 そう言って父が箪笥の一番上の引き出しから取り出したのは、薬瓶だった。【龍滅丸】と書いてある。薄茶色の小瓶から透けて見えるのは、大振りの丸薬だった。腹下しの時に飲む、セーロ丸のような匂いがした。 「万が一があって、龍人と子供を作る行為があったらすぐにこれを飲むんや」 「これ、なんなん?」 「子供堕ろしの薬や」 子供堕ろし。その言葉に喜一は震える。だが、父親は淀みなく言った。 「龍人は恐ろしい生き物や。捕まったら最後、子供を作らされる。それもあいつらはな、愛情で僕らを抱くんやない。自分らの血をもっと強くするために、僕らを孕ますんや。それも、飽きたら捨てる。そやけど元の場所に帰れる子は少ない。龍人はな、飽きたり、最初の子供を花人が産んだらそのまま次の龍人に売り飛ばすことが多い。項を噛まれて一生その龍人しか愛せないというのに……や。僕らは項を噛まれたら、その龍人が死ぬ事でしか解放されへんのや。なあ……怖いやろ?」 「うん、怖い」 「そやから絶対に龍人には近づいたらあかんのやで」 「うん解った」 「ごめんな……怖い事言って……でも、キーチは良かった……僕らに似てへんから……そんな目には合いにくいもんなあ」 そう言って父が喜一を抱きしめる。大好きよ、と言って母が額に口づけてくれる。皆で裸んぼう。そのまま両親と百合の香りがする布団に包まれて眠った。 その日の夢もあの夢を見た。 けれども夢の中の喜一はいつものように茶の間で正座をしているのではなく、自分も極楽浄土のような寝室で、両親と一緒に転がり回っていたのだった。
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