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ランニングマシンやショルダープレスマシンなどが並ぶ。わたしは、ここでダイエットに勤しんでいる。屋内なので、吸血鬼にとって快適な空間なのだ。
スポーツウェアに着替え、とりあえずフィットネスバイクにまたがる。しばらく漕ぎつづけると、次第に足が疲れてくる。
少し離れたところで、レイディが涼しい顔でダンベルマシンの設定を一番重くし、筋トレに励んでいた。アンドロイドだから筋肉なんてつかないと思うが。
そのようすを、ムキムキな男たちが驚きの形相で眺めていた。
数時間後、いい汗をかき終え、わたしとレイディは帰路に着く。
屋敷に戻ったころには、すっかり夕飯の時間になっている。レイディは台所に立ち、食材をテキパキと料理していく。テーブルが、じょじょに鮮やかな赤に染まる。
血染めのカルボナーラ。採れたて生き血の冷製スープ。血の気の多いカンパーニュ。血気盛んなババロア。若き血のワイン。
レイディが振る舞う、血湧き肉躍るディナーを味わい、わたしは満足感に浸った。おなかがパンパンだ。
「レイディ、今日もおいしかったわ」
唇をナプキンで拭うと、真っ赤になった。
「ありがたきお言葉です、お嬢さま。では、召しあがられた料理の総カロリーを発表いたします」
すぐ横で佇み、わたしの食べっぷりを観察していたレイディが、たんたんと告げる。
不快な気分になる数字だった。
「ふふ……。本日消費したカロリーを優に超えていますね」
わたしはレイディを一瞥し、恨みをこめて言ってやった。
「アンタって、ほんとに血も涙もないのね」
「ええ。アンドロイドですから」
冷めた口調で、レイディは返す。しかしながら、その顔はどこか楽しそうであった。
夜が更けていく。
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