捨てる神あれば拾う神あり

1/4
前へ
/14ページ
次へ

捨てる神あれば拾う神あり

夕方までダラダラと過ごしてしまった夏美は、重い腰を上げて部屋を片付けだした。 勢いで、久しぶりに部屋の模様替えまでやってしまう。 ──これは捨てるゴミ。 ──これも捨てる。 ──……そうだ、余計なものは全部捨ててしまえば良い。 「結婚願望も捨てよ!婚活もええかげん卒業や!」 きれいに片付いた部屋を見回すと、いつの間にか心も軽くなっていた。 「そや、明日鉢植えか観葉植物でも買いに行こ。お洒落になった部屋で、久しぶりに料理でもするかな」 何を作ろうかとワクワクしながらレシピを探す。 誰かに食べて貰うのではなく、自分が楽しめればそれでいいと思った。 「ワインに合う料理──日本酒でもいいな〜」 夏美の部屋が、彩を取り戻した。 日曜日、早起きして神社まで散歩に行った。 見慣れた鳥居も狛犬も、早朝の凛とした空気の中では違って見える。 お賽銭を入れて手を合わす。 ──私の人生、一人逞しく生きていけますように。それと、お酒は許して下さいね。 会社と自宅との往復で、商店街のまわりにも新しい店が開店している事に気付かなかった。 パン屋にカフェ、花屋もあった。 「良さげなお花屋さん。後で見に来よ」 一旦自宅に帰り、着替えて商店街を目指す。 新鮮な野菜と魚、日本酒もじっくり選びたかった。 日曜だからか、商店街は人通りが多そうだ。 八百屋『おサルのお尻はまっかっか』も、お客さんで賑わっていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加